救急車は、誰かが命の危機に晒された場合、早急に病院へ搬送してくれる大切な乗り物です。運転中に救急車のサイレンが聞こえたら、周囲の状況をよく確認し、安全な場所に停車、または進路を譲るようにしなければなりません。しかし近年、救急車の搬送時間が伸びている現状があるのをご存知でしょうか。総務省消防庁の調べによると、1998年頃は全国平均が約26分でしたが、2021年頃は平均約40分と大幅に伸びています。これは、15分近く時間をオーバーしている計算であり、由々しき事態といえるでしょう。救急車の搬送時間は命に直結する要素であり、一刻も早く、この問題を解決する必要があります。

救急車の搬送時間が伸びている原因は、いくつか考えられます。まず、高齢化社会の進展に伴い、救急搬送件数が増加していることが挙げられます。高齢者は、若い世代と比べて、病気やケガのリスクが高く、救急車を呼ぶ頻度も高くなります。救急搬送件数の増加は、救急隊員の負担増加に繋がり、搬送時間にも影響しているのです。また、携帯電話が普及し、簡単に救急車を呼べるようになったことも原因でしょう。手元の携帯電話でいつでも救急車を呼べるため、要請回数が増えているのです。ただ、本当に救急車が必要ではない人が要請をする事例も増えており、問題視されています。緊急性が低い症状の場合、救急車ではなく、自家用車やタクシーを利用しましょう。現在は、救急車を呼ぶか迷ったときに相談できる電話窓口もあるため、いざというときのために頭に入れておきましょう。

そして、救急車に道を譲らない救急車妨害も、搬送時間が遅れている原因の一つです。実際、遮蔽性の高い車の増加、高齢者ドライバーの増加、都市騒音の多さなどさまざまな要因により、ドライバーが救急車のサイレンに気付かないケースが増えています。救急車妨害は、道路交通法違反となるだけでなく、人命救助を妨害する行為です。私たち一人ひとりが、救急車の適正利用を心がけ、救急車に注意する意識を高めていくことが大事です。

海外と日本の医療で大きな違いといえば、海外では救急車を呼ぶと費用が取られますが、日本の場合は無料で救急車を呼ぶことができる点です。そのため、日本では事故に遭ったり急病になった場合でも、素早く救急車を呼んで対処すれば命が助かるというケースがあります。素早く誰にでも救急医療を受けることができるのが、日本の医療の優れたところです。

日本で定められている「救急医療制度」は患者の具合によって三段階に設定されています。軽症の場合、治療をして入院が必要な場合、重症で集中治療室での治療が必要な場合の三段階です。しかし、今は慢性的な医師不足や専門医の偏り(整形外科などの医師は多いが一般外科、内科の医師が少ない)、都市部以外の地方の医療環境が整っていないなどの問題から、救急車で運ばれる患者をすぐに受け入れてくれる病院が見つからずに、患者がたらい回しにされるという現状が多発しています。せっかく通報を受けて救急車が素早く対応してくれても、受け入れ態勢が整っていない病院があるために、次の病院、次の病院とたらい回しにされ、診察を受けるまでに時間がかかってしまうケースがあります。

近年では、たらい回しにされた結果、なくなってしまったというパターンも少なからず起こっているのです。また、軽症者が自分の都合のために休日や深夜帯などに救急車を呼ぶ「コンビニ受診」が多発していることも大きな問題とされています。休日や深夜は人手不足なため、コンビニ受診に多数の医療関係者が関わっていると、本来見なくてはならない入院患者や重症患者に十分に病院側が対応できなくなってしまいます。ひとりひとりが日常から救急車のお世話にならないように安全に過ごすことが大切です。