市場の創造・・・
それは最も難しい挑戦です。
簡単に言うと「今までなかった市場を形成した」という事です。
先月から宇治に定期的に来ていた為、個人的に非常に気になったのが「お茶スイーツ市場」です。
和菓子ではなく、洋菓子とお茶を組み合わせたこの市場は近年急速に拡大しました。
今でこそ、辻利、伊藤久右衛門、中村藤吉、通圓・・・200年、500年、700年の老舗を中心にコンビニや各種企業・販売店も参入しその市場を担っています。
一番わかりやすいのは1996年発売以降不動の人気ハーゲンダッツ「グリーンティー」ではないでしょうか。
しかし、本来のお抹茶やお茶の意味や「お茶屋の常識」からすると、お茶を洋菓子にする事など発想としてあり得ない事です。
なぜなら、お抹茶にとってお菓子とは添え物であり、お茶をおいしくいただく為のアイテムにすぎません。
お茶屋さんからすると、お茶を洋菓子にするという事自体がとんでもなくお茶に対して非常識(無礼)な事だったはずです。
それが、なぜ起こったのか・・・
気になり始めると調べずにはいられないので・・・ひたすら調べまくりました。
長年の伝統・格式を築いたお茶屋さんのとんでもないイノベーションがそこにあるのでは?
そのイノベーションを最初に起こしたのは誰なのかどの企業なのか?
お茶の未来を守るという強い信念以上の信念が無いと出来ないのでないだろうか?
今でこそ、ある一定の市場を形成していますが、その最初の一人・一社が無ければ、おそらくお茶の文化が廃れる中で多くのお茶屋さんが軒並みつぶれていたはずでは・・・
辿り着いたのは・・・・・茶游堂当主林屋和成さんでした。
おそらく、最初の発想は多くのお茶屋さんに非常識だと思われたと思いますし、無いものを作ったその苦労は一言でまとめる事の出来ないお心だったと推察致します。
いても立ってもおられず、メールをさせて頂くと社長直々にご連絡を頂き、先日お話を伺って参りました。
市場の拡大、市場の変化・進化はあったとしても、戦後のものが無い時代ではない現代で、ゼロからイチを作る力で「市場そのものを創造する」という事はそれほどに今の時代にはめったに無い事と思います。
HPでの林屋社長の言葉です。
現在、抹茶を使用したお菓子は飽和状態で、大手メーカーも参入して、全く本来のお茶ではない味のする、着色料や香料を使用した抹茶スイーツも販売されだしてきました。
京銘茶・茶游堂は、抹茶のスイーツが売れるから販売するのではなく、「お茶の美味しさをスイーツに乗せて未来に残す」ために、お菓子屋感覚ではなく「お茶屋感覚」で、しっかりと新鮮なお茶の風味を感じていただける商品作りをしております。
「宇治のお茶の風味を後世にスイーツの形で残す」というコンセプトで作られた茶游堂の抹茶スイーツは、言うなれば「食べるお茶」。
お茶屋が本気で作るスイーツ、千年の歴史をもつ宇治茶同様に不変不滅の「ほんまもん」をご提供するため日々精進しております。
実際にお会いし、直接お話をお伺いしましたが本当に感動でした。
頂いた「濃茶ロールケーキ」は私が今まで頂いたあらゆる抹茶スイーツで使用されている抹茶クリームとは一線を画するものでした。
完全に後味が「お茶」の後味であり、切れ方(舌への残り方)が全く他のスイーツとは異なります。
また葛切りも(シロップで浸している為混じるのは当たり前ですが)冷抹茶が再現されている葛切りは初めてでした。
葛切りは若い方からすると地味なイメージかもしれませんが、葛切りのような商品こそごまかしがききません。
その味はどう表現するのが適切か・・・48時間悩みましたが・・・・
この言葉しか思いつきませんでした。
「お茶屋の誇り」を感じさせる味。
宇治の町には多くの観光客の方がいらっしゃり、皆様有名老舗お茶屋さんの紙袋を持ち歩いておられますし、どの老舗さんの喫茶スペースもお客様でいっぱいです。
多くのお茶屋さんが当時しなかった「非常識」に対して問いを持ち、
業界の「お茶の常識」に挑んだ最初の人物は創業10年余りの現役社長様でした。
私史上・・・最も本来の「お茶」を感じた素晴らしいスイーツでした。
特に・・・葛切りは完全に「抹茶」そのものです。
お取り寄せも可能ですし、京都に行かれた際はぜひお立ち寄り頂きたいお店です。
表には見えないかもしれませんが、市場を創造するというご苦労とお茶屋の矜持を貫かれているその想いと一緒に、ぜひ召し上がって頂きたいお品です。
茶游堂さんHPはコチラ