佐藤可士和のクリエイティブシンキング
佐藤 可士和
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◆はじめに◆

国立新美術館のロゴ、立川市ふじようちえん、キリンビールのCM。

それらを手掛けたクリエイティブディレクター・佐藤氏の本。


著者はクリエイティブとはアーティスティックな自己表現ではなく、

クライアントの内なるものを言葉にするコンサルタントであると主張している。


従来の教科書的なマーケティングが役に立たず、

かつ急速に変化するビジネスシーンにおいて、このクリエイティブな考え方は

必ず必要になってくるものと思われる。




◆前提を疑う◆

クリエイティブな考え方を身に付ける方法として、

「そもそもそれでいいのか?」という疑問を抱くことをまず挙げている。


過去の慣習や業界の常識といった「前提」を疑う気持ちがないと、

物事はダイナミックには変化していかない。


ここで著者が言うには、必ずしも常識や習慣を否定する必要はないということ。

一度疑ってはみたものの、やはり正しいということも多い。


とはいえ、まずは疑ってみることが重要だと思われる。




◆お客様目線とお茶の間目線◆

本書では、企業が想定する「お客様」と、世間のニーズには乖離があると書かれている。


「お客様」は、自社の製品を買ってくれるだろうという高い期待値が前提になっている。

しかし、世間はもっとクールかつドライな目線で商品を見ている。


例えば飲料。競合する企業との間で徹底的な差別化を図ったと思っても、

消費者から見れば微妙な差でしかないこともある。

携帯電話のカメラにしても、世間の消費者が

本当にそこまでの画素数を求めているのかはわからない。


会社員は、普段は消費者なのだから、その世間の目線を大事にしたい。




◆ブロガーのあとがき◆

興味深かったのは、佐藤氏が美大生だった頃の話。


作品づくりは、「自分とは何だ?」と問いながら、個性を表現していかなければならない。

自分らしさを突き詰めていくと、相反する性質のものがなぜか両方好きだったりするなど、

矛盾が多いことがわかる。自分を正確に把握することは難しい。


この話を読んでホッとした。

私自身、自分がよくわからなくなる時がある。


時に優しいと言われたり、時にドライと言われたりと矛盾だらけだ。

しかしかの佐藤可士和氏ですら、自分を把握するのが難しいと言っている。

私の心が軽くなった気がした。