大臣 (岩波新書)
菅 直人
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◆はじめに◆

菅氏の首相就任に伴い、

過去の記事を再掲する。

この記事は、今年3月に書いたものをそのまま掲載した。

よって、執筆当時の役職のままになっている。


なお、連続記録には含めないことにした。
(3月の段階で数えており、今回を含めると二重計上になるため)



◆大臣、菅直人の主張◆

現・財務相である菅氏が、

厚生大臣(橋本内閣)時代の経験を

踏まえて書いた提言書。


増補版が出ているようだが、

私が買ったのは98年出版のもの。

過去の主張を読みたい場合は、

増補版ではない方を読むことをお勧めする。


ちなみに、現役政治家が岩波新書で本を出すことは

異例のことであった。


今でこそ新潮新書にて「とてつもない日本(麻生太郎)」や

「堂々たる政治(与謝野馨)」が、

文春新書にて「美しい国へ(安倍晋三)」が発行されているが、

本書はそれら"政治家"新書の走りなのかもしれない。



◆厚生大臣として◆

菅氏が厚生大臣を務めた期間には、

O-157薬害エイズ問題という問題が起きていた。


薬害エイズについて、大臣就任時に

菅氏の頭にあったのは、航空機事故の際に

運輸省(現・国土交通省)によってつくられる

「調査委員会」を作るということ。


当然ながら、官僚たちは「前例がない」として反発した。

菅氏が「自分1人で調査する」と言ったところ、

ようやく官僚側も了解した。



特筆すべきは、枝野幸男氏(現・行政刷新担当相)の言及。

枝野氏は当時、菅氏と同じ「新党さきがけ」に所属しており、

薬害エイズ事件にも熱心に取り組んでいた。


菅氏が枝野氏に「質問意見書を出したらいい」と

アドバイスをしたのは、95年の時。

その時枝野氏はまだ一年生議員だったが、

弁護士出身という能力を買われていた。


翌96年に菅氏自身が厚生相になることで、

枝野氏の意見書に菅氏が答えることになる。

このことが、薬害エイズ事件をスムーズに進める

きっかけになる。


この二人の関係を踏まえながらニュースを見ると、

ニュースがより面白くなると思う。



◆官房副長官と閣議、事務次官会議◆

民主党政権誕生で、事務次官会議が廃止された。


その事務次官会議こそ、

「国の最高意思決定機関」となっていた(本書より)。


事務次官会議で全会一致で賛成されたものしか、

閣議に上がってこないというシステムだったのだ。



その事務次官会議と閣議の両方に出席するのが

官房副長官というポストに就いている人物である。


総理大臣がいなくても代理で閣議は開けるが、

官房副長官がいなければ、

閣議が出来ない仕組みだったのだ(石原信雄)。


この官房副長官、総理大臣への登竜門とも言われる。

その所以が、上記のような仕組みにあるのだろう。


この副長官ポストからの総理輩出率は多く、

古くは佐藤栄作内閣時に竹下登氏、

三木内閣時に海部俊樹氏、

福田(赳)内閣時に森喜朗氏らが

いずれも副長官を経験している。


ちなみに、細川内閣時の副長官が

鳩山由紀夫氏(現総理)であり、

森・小泉内閣時の副長官は安倍晋三氏だった。



◆ブロガーのあとがき◆

カイワレダイコンが騒がれた当時、

私の通っていた小学校でも大変な騒ぎだった。


学校給食をケータリング業者に委託し、

給食当番には厳重な衛生管理を徹底した。


今もそうであるが、マスコミの過度な報道が

騒ぎを大きくしたような気がする。



また、菅氏の本書での弁明も見所。


マスコミから「カイワレ大根役者」と揶揄された、

菅大臣によるカイワレサラダをカメラの前で

食べてみせる行為については、

「知人の編集者から『大臣自ら食べて見せれば、

国民が安心する』と聞き、それしかないかなと思った」

と述べている。

同時に、騒動を起こす公表の仕方に問題があったことも

認めている。



あれから14年ほど経った。

内閣には食品安全に関するポストも出来た。

同じ轍を踏まないようにして頂きたい。