今年も暑くなりそうだ。


また夏が来る。


遠かった季節の足音が近づいてくる。


不思議な季節。


開放的な気分の裏で、どこかせ懐かしく切ない気分は隠せない。


俺がまだ小さかった頃は、日が長くなるこの季節は遅くまで遊んだ。


幼稚園の裏の溝、家の庭、公園の植え込み、どこを探しても俺たちの小さな遊び相手はいたんだ。


今思えば、小さな命をもてあそんだのかもしれない。


でもきっとそうやって、人は命を知っていくんだ、と。


家に帰れば、冷たい麦茶を出してくれるお袋がいた。


日に焼けて、遊び疲れてすぐに寝てばっかりだった。


いつも遊んでたあいつは、今じゃ大学で生物なんとかを専攻してる。


変わってないんだな、あいつのルーツは幼稚園の裏の溝なのかも。


俺は大学で、なんだかはっきりしない毎日をなんとなく過ごしてる感じだ。


これも変わってないのかもしれない。


俺のルーツは遊び疲れていつも寝てた、実家のソファー。


ここ何年か、もう日に焼けることもなくなった。


あいつと会うのも、年に一回あるかないか。


小さい頃がまるで嘘みたいに。


でもきっと何も変わってない、何も変わらない。


俺たちのルーツは、今もそのままで夏の夕陽に照らされてるんだ。


夕陽のセピア色が、思い出のフィルター。


蝉の声、照りつける太陽、夏の匂い。


もう戻れなくても、きっとまだそこにある。


寝苦しい暑さでふと目を覚ました今日。


何か夢を見ていた。


楽しい夢。


ほんとうに、全部が夢のようだった。


昨日コンビニで買った麦茶がテーブルに一人立っている。


お袋の姿が見えた気がした。


遊び疲れた俺の帰りを、いつもやさしく迎えてくれた。


帰る場所は今も、色褪せてないんだ。


今年も暑くなりそうだ。


今年の夏は久し振りに、日焼けでもしてみるか。