あんた、大切な人はおるね? | †† あらかじめ失われた愛 ††

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「ホホウ( ゜∋゜)と思ったセリフ集」、その一五です。


悪 人


日本公開:2010年
監督:
李相日
脚本:吉田修一、
李相日
原作:吉田修一『悪人』(朝日新聞出版)
主題歌:「Your Story」福原美穂
音楽:久石譲
配給:東宝
出演:妻夫木聡
、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、樹木希林、柄本明、宮崎美子
ストーリー:土木作業員の清水祐一(妻夫木聡)は、恋人も友人もなく、祖父母の面倒をみながら暮らしていた。
馬込光代(深津絵里)は、妹と2人で暮らすアパートと職場の往復だけの退屈な毎日を送っていた。
孤独な魂を抱えた2人は偶然出会い、刹那的な愛にその身を焦がす。しかし、祐一は連日ニュースを賑わせていた殺人事件の犯人だった ──。
光代はそんな祐一の自首を引き止め、祐一と共に絶望的な逃避行へと向かう。
なぜ祐一は人を殺したのか? なぜ光代は殺人者を愛したのか? 引き裂かれた周囲の家族の運命はどうなるのか?
──そして、いったい誰が本当の“悪人”なのか?
(アマゾン商品紹介ページ「ストーリー」より要約)


これも、DVD・ブルーレイレンタルになってから、ちょくちょく鑑賞します。
自分の状況がハードなときは、なるべくユルい映画を観るようにしているのですが、いくら悲惨な現実を抉ったシリアスなものでも、いい作品は最後までイッキ観してしまいます

本作もそうだし、先日の『ばかもの』もそう
ひとりじゃ、できないから…! ポストゼロ年代のメロドラマ )。

『ばかもの』がポストゼロ年代に向けてのメロドラマを目指した作品と言うならば、『悪人』はポストゼロ年代を生きる僕たちの社会の生きにくさ、閉塞感を、しかも地方を舞台に描ききったシリアスドラマと言えるのかなあ、などと思いました。

小説も映画も有名だし、ストーリーも上に掲載しましたので、くだくだ語る必要はありませんね。

さて、地方の閉塞感を見事にあらわしたダイアローグだなあ、と感じ入ったのが、ホテルで情事をすませたあとの妻夫木さんと深津さんのもの。↓


ここに来る途中、安売りの靴屋があったやろう? 
あそこを右に曲がって、まっすぐに田んぼの中を進んだところが、あたしの高校やったとよ。
そのちょっと手前に、小学校と中学校。今の職場も、あの国道沿い
なんか、考えてみたらあたしって、あの国道から全然はなれんやったとねぇ。
あの国道を往ったり来たりしよっただけで…



地方都市出身の僕にも、この感じ、よーく分かります。
妻夫木さんが、こう応じます。


おれも似たようなもんだ
目の前に海があったら、もうその先
どこにも行かれんような気になるよ



地方の漁村の町でくすぶっていると、そんな気になるのかもしれませんね。

そして、全編名セリフ、名シーンだらけなんですが、やっぱり柄本明さん演じる、娘を殺された父親がその憤りを吐露した以下のセリフ↓が強く胸を打ちます。映画の予告編にも少し入っていたので、見かけた方も多いのではないでしょうか。


あんた、大切な人はおるね? 
その人の、幸せな様子を思うだけで、自分まで嬉しくなってくるような人は…
今の世の中、大切な人がおらん人間が多すぎる。
自分には失うものがないちゅう思い込んで、そいで強くなった気になっとう
だけんやろ、自分が余裕のある人間と思いくさって、失ったり、欲しがったりする人をバカにしたうえで眺めとう
…そうじゃないとよ。
そいじゃあ人間は、だめとよ




…(´;ω;`)ブワア

としか、応えようがありません。

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