地元の小学校の夏祭りの
金魚すくいで、
ビニールに入れて連れて帰ったのは、
2回。

最初の夏は、一匹だった。
水槽も何も、飼う環境がなかったので
ショップサイトであれこれ検索した。
その間は洗面器に浄水器の水を張って
金魚用の餌をひとつまみ蒔いたら
よく食べてくれた。
4日くらい、
洗面器生活で我慢してもらうことにした。

上を向いて口をパクパクしている状態が
ついお腹が空いていると勘違いし
元気だな、と眺めていた。
調べればわかることだけど
水面から顔を出す行動は
酸素不足だったのだ。
ゆえに、最初の金魚の死因は
酸素不足、いや、
飼い主側の知識不足だった。
同じく金魚を死なせてしまった友だちの家の庭に
アイスの棒を墓標に埋めた。

次の夏、祭で二匹すくったと聞いた足で
すぐに水槽を用意した。
酸素を供給する装置、砂利、餌、
バクテリアはすくってきたビニールの水を
そのまま活用。
水温を合わせるため、
ビニールに入れたまま水槽に浸け、
同じ水温になったところで放すくらいの
”飼い主の心得”は調べた。

よく見ると、
二匹のうち一匹は
片目がない。片側のヒレも動いていない。
どうも、左半分が成長していないようだ。

餌もうまく食べれないながら
少しずつ大きくなった。

もう一匹は、
フナみたいに肥えていった。
色艶よく、泳ぎもダイナミックで
よく食べるからつい餌を与えすぎ、
そのぶん出すものも大量で
水槽を汚しまくった。
水槽の掃除中は、
一匹ずつ塩水浴で健康管理。

ある日、水槽の水を足そうとして
フタを開けたら、手が滑って
うっかりフタを水槽に落としてしまった。
片目の子に当ってしまったのか、
とても驚いてバタバタ騒いだ。ごめんごめん!

片目の子ほうは、大きいほうのと
大きさでは4倍くらい差をつけられて
よく調子を崩して元気とはいえないけど、
初回のことを考えたら本当に頑張っているよね。

フタを落とした日の夜、
そんなことを話しながら帰宅したら、
片目の子が動かなくなっていた。
我家に来て9ヶ月。
フタの落下がきっかけかはわからないけど、
引き上げてみたら
腫瘍のようなものができていた。
死因はたぶん、先天的なものが大きいと思う。
よく頑張ってくれたな、と
公園の隅の木の根本に埋めた。
花を添えたので、子どもたちも毎日
墓参りをした。

残された大きなほうは
でかいから”でいこちゃん”と名付けられ
でかすぎてふてぶてしいけど
飼い主が心配することが一切ない
プリプリでツヤツヤ、橙色も鮮やかで
キレイな和金になった。
餌をあげすぎるのもよくないということで
頻度と量を減らし、そのかわり水草を常備した。
水も汚さない工夫ができるようになった。


娘の小学校の授業の一環で
おうちの金魚を学校へ持っていって
みんなで観察することになった。
いくつかの家庭から、
何匹か集まったらしい。
娘も、でいこちゃんは自慢の金魚だから
是非披露したい、連れて行きたいと切願。
どうやら、学校に水槽も酸素の機械もあるらしく
持ち運びもビニール程度でいいというので
カルキ抜き水をたっぷり水筒に詰めて
生魚専用のビニールに入れて登校した。

だいたい1泊2日くらいの滞在予定らしく
「明日にはお返しします」と
連絡帳には書いてあった。

ビニールでの移動はせいぜい15~30分が限度。
働いている私は娘を学童に預けているので
放課後から4時間位上は持つまい。
土曜日の朝まで預かってもらうことにした。
娘に毎日「でいこちゃん元気?」
と聞くと「元気。人気。」と答え、
クラスを癒す存在になっているとのことだった。

連れて帰る予定の土曜の朝は
昼からの家の工事でたてこんでいて
「午後にしようか」と娘と話し合っていた時、
電話が鳴った。

担任の先生から、
金魚が水槽を飛び出して、
死んでしまいましたとのこと。
まだキレイな橙色だったので、
飛び出して間もないようだとのこと。

朝イチで迎えに行けばよかった。
いや、土曜より前に、
やっぱり1泊2日とかで連れて帰ればよかった。
そもそも、学校に持って行かなければよかった?
どう後悔していいかわからない。

いずれにしても、
家の水槽を出て、
生きて帰れないことになってしまった。

慌てて引き取ったでいこちゃんは
職員室の冷蔵庫で保管されており
鮮やかで鱗も輝いて、動かないだけで
健康体そのもの。

死因は、事故。

水槽が狭くフタもなく、
水温の環境が悪ければ
ヒレの力が強い和金は飛び出してしまうらしい。
事故、といっても、
人為的に与えられた環境によるもの。

うまく飼えるようになったな、と
大切にしていた矢先の出来事だった。

1度目の”無知”の反省。
2度目は、力及ばず。
3度目が、一番こたえた。

主が外出中の水槽が寂しいと
帰宅を心待ちにして、
掃除してフィルターも交換して準備していた。

今は、花を飾っている。

金魚すくいの稚魚たちは
ほとんどが悪環境での養殖で
病気持ちだという。
引き取られなかった稚魚たちの運命はわからない。
飼われても、うまく育てられなければ
死んでしまうから、
一年でも二年でも生きられる金魚は
ごく稀なのかもしれない。

「金魚掬いならぬ、金魚救いをしたい」

命を守れなかったと後悔ばかりするくらいなら、
もう一度、
どういう運命になっちゃうかわからなくて
病気に罹っているかもしれない稚魚を
一匹でもでいこちゃんみたいに健康に育てたい。
主を失ったカラの水槽もそう言っている。


でいこちゃんは、息子がすくって、
すくい網にひっからなかったけど
欲しくてオマケでもらってきた金魚だった。

息子は、泣いた。

娘は、元々あまり金魚自体に
興味を示していなかったかもしれない。
だから娘は、
でいこちゃんの死にピンときていない。

送り出して、滞在先から
「事故が起きてしまいました」
と電話がかかってくるという状況だよね。
生きて送り出して、生きて帰れないということ。
家族はどんな気持ちだろう?

でいこちゃんは、自分で飛び出してしまった。
子どもが横断歩道を飛び出してしまうのを
想像してごらん。
”注意しなければ、悲しいことが起きる”
って、でいこちゃんが教えてくれたのかな。
もっと、気にしていればよかった、と
家族は後悔して悲しむことも、教えてくれたのかな。

期せずして命のことを教えてくれた
でいこちゃんのことを、
何度も思い出して話していこうと思う。
だからママは、
ショックでガックリ落ち込んで、後悔している様子を
取り繕いもしません。
あなたがたもママを悲しませないように
事故や事件に注意してください。

でいこちゃん、有難う。