繁殖主義

「遺伝子を残すことが生まれた意味である」

「子孫を残し反映させることが人生の目的である」

そうした考え方を繁殖主義と呼ぶことにする。かつての自分もこの考え方だった。

しかし、これは多くの危険をはらむ稚拙な主義主張であると今は考えている。

この考え方は一定のひとがたどり着きやすく、かつ理屈も通っている（ように見える）。私たち生物は遺伝子を運ぶ船であり、それを増やすことでここまで栄えてきた。ゆえに、この遺伝子にのっとって、自分の子をたくさん作り残すことが善い生き方である、そう考えるのが彼らだ。

さらにそれを後押しするような肉付けの主張もたくさんある。以下は一例だ。

・子を増やすと少子化の抑制に貢献できる

・弱肉強食の生態系において、増えることが種の存続につながる

など。これを意識せずとも持っている人は一定数いるのではないか。

しかも厄介なことに、生命のこれまでの流れにのっとっているように見えるうえ、上記の受け入れられている主張もあるから、これこそ絶対正義だと思い込みやすい。、、、、これこそが生きる理由、意味であると。客観的な答えであると。

だがこれもまた単なる偏見、主張の一つに過ぎないのだということを知らねばならぬ。

「生きる目的=遺伝子を増やすこと」について

　これは勘違いである。遺伝子が増えていま生きている、だけであって、そこに目的や意味を見出しているのはあくまであなただと知らねばならぬ。遺伝子が増えている、そういう事実があるだけだ。過去の事実があるからと言って、それになぞらえるのが＝「善いこと」にはならない。数学ができる人ならわかるだろう。

　そもそも私たちに生きる理由や目的など無い。客観的な正解を求めたがるが、そんなものはなく、強いて挙げるならば「生きるために生きている」のである。そのうえで、私たちが勝手に役割や意義を見出すのは自由だ。しかし、客観的正解などは無い。

　よって、私たちの生きる目的は遺伝子を増やすことなどでは全く無い。

「子を増やすのが善いことである」について

　これも偏見である。現状の社会システムを見たとき、短期的には少子化を解消することは現状生きている人にとって経済的に良い影響をもたらすだろう。しかし、そもそも増え続けなければ成立しない社会制度(年金、経済システム等)に問題があるとは思わないだろうか。また、長期的には増え続けることが資源を減らし続けるのでむしろ生物種の寿命を縮める可能性もある。

　また、一つ例を挙げるならレイプ犯はどうだろうか。「たくさん子を残したから偉い」になってしまうのだろうか。ここまで極端でなくとも、生まれた当人は生まれたくなかったかもしれない。ただ増やせばいいなどと無責任な主張になっていないだろうか。ニュースや学校の授業で少子化が悪いことと刷り込まれた結果何も考えずに言っていないだろうか。

　集団のために個が犠牲になる可能性をはらむ主張を、私たち個人は否定していくべきじゃないのだろうか。明日は我が身だと思い、闘うべき理論ではないのか。

　子を増やすことに対して善い、悪いということはできない。ましてや正義もない。

私は厳しくこの繁殖主義を否定する。それは、私がこの考えが間違っていると思うからではなくて、あくまで主張の一つに過ぎないことを再確認してもらうためだ。

生きる意味や目的に、客観的正解、正義は存在しない。ましてや、それを人に押し付けてはならない。