梅図かずお先生。少年時代、私はあなたの作品から多くのものをいただきました。魅力的な作品、登場人物。中でもとりわけタマミは魅力的だ。そして可愛い。
一般的には「のろいの館(赤ん坊少女)」のヴィラン、タマミ。美しい少女葉子を苦しめる奇怪な容姿のタマミである。しかしタマミは葉子に言う。「お前はわたしがいじめてばかりいたと思っていただろうけど本当はお前がわたしをいじめていたのよ。」
そしてタマミは最後に葉子の美しい顔にかけようとした硫酸を自ら浴びてしまい、今際の際に「タマミは悪い子でした」と母親に告げながら死んでいく。焼けただれたタマミの顔の美しさ。
何ら自分を相対化せず悲劇のヒロインとしての存在の域を出ない二次元的美少女葉子に比べて、タマミははるかに人間的で、健気で、哀しく、美しく、魅力的なキャラクターであるように思う。
このようにひとつ例をとっても楳図作品には単なる勧善懲悪を超えた重層性があり、さまざまな意味が秘められている。もちろん幼時の私はそんなことは考えもしなかった。しかしながら不可解さはなんらかの形で潜在意識に残っていたと言わざるを得ない。
存命中に先生にお目にかかりたかった。そして私の思いを伝えたかった。悔やまれてならない。楳図先生、素晴らしい作品群を大変ありがとうございました。
