「ドラゴンクエスト ユアストーリー」ネタバレ感想 | どらくえ考察ブログ

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がんだまぁBlogから派生したドラクエ考察ブログです。
かつてはアーケードカードゲームの日記に使っていたので過去記事に残っています。

 見てきました。ネタバレ情報は見ていなかったのですが、それでも漏れ出てくるネットの声が酷評ばかりだったので、よほど酷いのだろうとハードルを下げてみてきました。

 ネタバレ情報全開ですので、ご注意ください。

 

 

 

 

 

 まず、ドラクエ5のアニメ版としてはそんなに悪くなかったです。脚本家はかなり頑張ったと思います。改変点も概ね納得がいくものでした。主な改変点は以下の通り。

・マーサが天空人

・妖精の村省略

・マリアやニセ大后省略、そのためサンタローズは滅ぼされない

・天空の盾ではなく剣がサラボナにある

・フローラ結婚の条件がブオーン討伐

・ビアンカが少女時代より大幅レベルアップして大魔法使い扱い(再会時点でベギラゴン覚えてる)

・ブオーンは仲間になる(プオーンになって付いてくるのかと思った…)

・グランバニア自体省略(但しオープニングのSFC画面はグランバニアだった)、拠点はサンタローズ

・子供は息子だけ

・レヌール城で手に入れたのはドラゴンオーブ

・妖精の城の位置がチゾット

・魔界の門は大神殿にある

 

 ストーリー短縮のため以外の改変だと、マーサが天空人というのは、エルヘブンの血と天空の血がややこしかったのでこれはこれでシンプルでよいと思います。ビアンカが大神殿に連れ去られる理由にもなりましたし、ミルドラースがかつて封印されたという設定で、その復活のために暗躍するのがゲマというのも分かりやすかったです。正直リメイクドラクエ5よりしっかりしていると思いました。

 納得がいかない改変点があるといえば、それは娘が出ないことですね。いくらストーリー短縮のためとは言え、ドラクエ5好きな人で双子に思い入れがない人はいないと思うので、その片割れを省略してしまうのはいくらなんでもどうかなと思いました。

 

 

 で、問題のラスボスなわけですが、CGがめっちゃ適当かつ容量を落としていたあたり、なんか予算不足でミルドラース戦を描ききれなくてそうなったの?と思ってしまう唐突な路線変更でした。確かに、そのまま予定調和的にラスボスを倒して終わっても、物語的に何もドラマがなく、ただドラクエ5を一通り映像化しただけになってしまっていたので、最後に一ひねり入れたかったのはわかります。ただ、「実はゲームでした」というにはあまりにも生真面目にドラクエを映像化していましたし、伏線が全くなかったわけではないのですが、唐突に捻じ込んだ打ちきりエンド感は拭えませんでした。ミルドラース(仮)の言い分を完全に論破できないまま、山寺宏一スラリンの勢いで押し切るだけなあたりが特に。途中まで普通にドラクエだったのに、突然素人が作ったシナリオのようになってしまうのは「うわぁ~やっちゃったよ~」という気分になりました。

 これでまだ、ウイルスワクチンだったスラリンがスクエニの差し金で、ウイルスの言い分に対し「スクエニはゲーム好きのまま大人になったあなたを否定しない!(だからこれからもドラクエやってね)」とか言って、過去にプレイしたドラクエのプレイデータから別作品の情報を読み出して、それでロトの剣を使って倒すなら、それなりに綺麗だったと思うんです。それなら「僕は(5主人公だけでなく別作品では)勇者だった」って言うのも分かりますし、エンディングが「そして伝説へ・・・」でも理解できるし、タイトルがドラクエ5じゃないのも5以外の要素があるからだねと言えたんですが。その辺詰め切れないままとりあえず納期に間に合わせた感が非常に駄作感を醸し出していました。

 

 そうそう、BGMは5中心ではあったんですが、4や6のBGMも使われていて、「ちゃんと天空編に絞ってるんだな、分かってるな」と思っていたんですが、何故か「この道わが旅」と「そして伝説へ・・・」だけ使われているのが謎でした。そこは4と6のエンディング使えよって言うね。どうもロトシリーズを推したい人がスタッフ内にいたのかもしれません。元々は3の映像化のオファーがあったって話ですし。

 スタッフインタビューを見る限り、堀井雄二氏も山崎監督も、最初は断ったけど最終的に引き受けた、と言っていることからプロデューサー主導で進んだ企画なのが見え見えですし、それでこの内容かよと思うと、主に日テレあたりのイメージが大幅に下がる失態だなぁと思ったりもします。リュカの名前を小説版作者に無断で使ってたり、鳥山明デザインのキャラにしなかったり、「分かってない感」が凄いあるので。

 

 ただ、その分本筋自体はそれなりに良く出来ていたので、少なくともアニメーションを作ったスタッフはドラクエのことが良く分かっていたし、愛しているのだなというのは伝わってきました。フローラとビアンカの表情も凄く良く出来ていましたし、呪文も原作で使うものしか使っていなかったですし(息子がルーラ使っていたのは娘がいないからでしょうし)。せっかく魔物使いが主人公なんだから、もっと仲間モンスターはいて欲しかったですけどね。CGあんまり作る予算なかったんでしょうね。スライムナイトくらい欲しかったですよね、5なんだし。

 

 あー、フローラとも幼少時に会ってたっていうリメイク版の設定は要らなかったかなーと思います。元々その改変があまり好きではないんですが(幼馴染みのビアンカに対して運命の出会いっぽい感じが対極で良かったと思うんです)、シナリオ上過去に出会っている事にほとんど意味がなかったように思います(単純に互いの一目惚れでよかった)。物語的にもSFC版推しだったので蛇足に感じました。わざわざSFCグラフィックで幼少時のフローラを作ることもなかろうにと思います。

 

 

 ここからは個人的な話。ドラクエ5は、自分の人生の中でも最も大きなウエイトを占めるゲームです。プレイしたのは小学校5年くらいでしたが、自分の異性観を作ったのは完全にドラクエ5(のビアンカ)だからです。まず物語の途中で主人公が結婚して子供まで作るというのが斬新だったのですが、その中でさりげなく込められている恋愛描写が、ちょうど異性を意識始める年齢とシンクロしてしまったんですね。それでいて、ビアンカの「フローラさんを選びなさいといいながら凄く寂しそうにする描写」が自分の好みの女性にド直球ストライクだったようで、こういう女性を幸せにするのが自分の男としての使命なのかもしれないと思っていたくらいでした。ゲームとして面白いからだけでなく、ストーリーにここまで感情移入できたゲームもありません。

 その上ソフトのゲームが消えやすいという特性上(苦笑)、何度も初めからやり直しているので、ゲーム的にもほぼ熟知していて宝箱や小さなメダルなどの位置は今でもだいたい覚えています。こんなにやり込んだゲームは他にありません。

 「ユアストーリー」はドラクエ5が好きな人ほどショックを受けるラストだとも言われていますが、個人的にはショックはあまり受けませんでした。あのラストはプロデュースする側の罪であってアニメを作っている側の責任ではないのかなと思うからです。それよりもですね、ビアンカの描写がとても良かったんですよ・・・(笑)

 ゲームのドラクエ5の展開として、ビアンカを戦闘で生かすのって結構難しいんですよね。大人になってから再会してもレベルは低いままなので、そのままだと戦力にならないので、滝の洞窟に連れて行く人はそう多くないと思います(ビアンカを連れて行ったときだけ特殊台詞が出ると知ってからは、必ず連れて行くようにしていますが)。結婚してからも一線級になる頃にはまた子供が出来て離脱してしまって、そのままラスボス直前まで復帰しないので、またレベル的に置いていかれてしまっていると。でもシナリオ的には、ビアンカはずっと一線級だった方が自然なんですよ。少なくとも結婚するまでただの一般人だったフローラよりは強くなきゃいけない(成長するとフローラの方が強くなるのは別にOK)。そこにもどかしさを感じていたので、今回の「むしろ主人公よりレベル高くなってるビアンカ」と協力してブオーンを倒すという展開は、結構胸熱だったんですね。フローラよりもビアンカを選びたくなる理由が、単に「パッケージイラスト的にこっちが正解としか思えないから」ではなくちゃんと相棒として相性が良いというのが描かれていたのが、とても良かったです。ほんとに、ブオーンを結婚前に持ってくる改変はかなりナイスだと思います。青年時代後半だとかなり取ってつけたような展開だったので(あの強さは印象的ですが)、結婚前ラスボスみたいな扱いの方がシナリオ的な説得力はかなりありました。これだけでも、脚本家は評価できます。

 あと性格的にも「これは俺の好きなビアンカじゃない」と思わせない理想的な描かれ方だったのが良かったです。ちょっと憎まれ口で見下し気味なお姉さんだったり、フローラに告白しようとしているのを応援して見せたり、その後飲んだくれたりしてるのも、割と「アリ」でした。声優も全然違和感なかったなぁ。これはフローラもですが。結婚後、母親になってからの凛々しい感じも良かったと思います。

 そういう意味で、ビアンカを中心とした作品の描かれ方自体は、非常に良かったんです、この作品。それを中途半端な形で世に出したのが良くなかったというだけです。だから、この作品が今後どういう評価を受けようと知ったことではないですが、決して時間を無駄にしたとは思わなかったです。娘はいて欲しかったけど。

 

 

 というわけで、「ラスボスのとこだけクソだよ」ってところだけ差し引いておけば、「めっちゃいいビアンカ映画だよ」と言うことができます。フローラ派の人は、まぁ我慢してください。主人公に惚れてる描写は可愛かったでしょ(声優の演技も良かった)。あの変化の杖みたいなのどうしたんだよ!という突っ込みはありますが、天空の剣とか盾とか家宝にしてる家だからね、たまたま持ってたんでしょうね。