すみませーん
御岳の水
ありますかー
そう声をかけたのは
もう20年くらい前のこと
木曽を語るとき
この話をせずには始まらない
中山道須原の宿で
造り酒屋を発見
造り酒屋は健在
いたるところに水船
そのころは
ペットボトルの水は
六甲の水くらいしか
知らなかった
奥から
暖簾をかき分け
おかみさんが出てきた
「みずう」
驚いたように答えて
すぐ
「ちょっと待って」
と言って奥へ
頭の上には
太い梁
(と言うかどうかは知らないが)
が何本も横に渡され
その上に板が張られていたので
それが2階の床なのだろうと推測した
立派な建物だ
と思った
すぐに
おかみさんが
戻った
盆にの上には
2個のコップが乗っている
なみなみと水が継がれている
「御岳の水なんか飲まなくても
この水を飲みなさい」
と差し出してくれた
今汲んだところだと思うが
コップには
すでに水滴が付いていた
別にのどが渇いたというのではなく
水を購入しようと声をかけただけだったが
おかみの
勢いに
それは言いだせず
友人と
顔を見合わせただけで
黙っていただいた
旅の途中であると
話すと
ここ須原の宿場のこと
ここの水が良いこと
知らない町へ
嫁いできた頃のこと
島崎藤村とのかかわり
近くの美しい渓谷のこと
木曽ヒノキが素晴らしいこと
自分の店の酒を買えとは薦めなかった
が
熱く熱く語り始めた
話はどこまでも続く
どんな具合にその場を逃れたかは覚えていない
木曽の人の人情が
十分うかがえた
店の中をのぞく
やはり記憶通り
二階の床がみえた
人影はない
濁り酒の旨そうなのが置いてあった
思わず
戸を開けかけた
はっと我に返る
急ぎ旅
今日中には
木曽を駆け抜けるつもりでいる
宿場の風景をカメラに収め
国道19号線に戻る
妻籠の宿を通り過ぎてしまい
馬篭に向った
やはり
観光客は多い
以前ここから歩いて峠を越えたた
せっかくだからと
馬篭峠付近まで戻った
高校生か
集団で歩いていた
こういうのを見るたび
引率責任者の趣味が入っているのか
と
勘ぐってしまう悪い癖
ここは
ハイカーや
外人の観光者も多い
峠で
あの忌まわしい出来事を
思い出してしまった
数年前
紅葉の中山道を歩こうと思い立ち
それならここしかないと
馬篭から妻籠の間を選び
馬篭に車を置き
妻籠に向かった
峠を登るまでは
何事もなかったが
峠を少し下りたところの
茶のあるあたりで
立場茶屋
たぶんここだ
ここに違いない
緊張して歪んでいます
案内板を読んでいたとき
ふと足元に目をやった
いたあー
泉鏡花の高野聖ではないが
どれだけあるのか分からない
しかし
その太さから推測するに
数メートル
いや
向こうの山まで届いているかも
の一部がそこに
ぎよえわあ~~
なんと叫んだか分からない
妻籠の宿まで届いているかも
オリンピック選手に選考される位
飛びあがったかもしれない
20メートルか30メートル後方を歩いて居たアベックが
思わず反対方へ逃げだした
その後が大変
前でがさっ
横でがさっ
そのたびに反対方へ飛び退く
結果
前で見つけ
後ずさりして後方で見つけ
身動きとれず
団体が通るのを待ち
とぼとぼと
後方をついて歩き
危機を脱出した
あの忌まわしい記憶がよみがえる
熊と出くわせば命がけであるが
こいつもなかなか
こんな嫌な思い出の木曽路はさっさと済ませ
昨日は
滋賀県までやってきました
今日は午後には
台風の通り過ぎた
自宅に到着します
そんなわけで
太平洋を見ることもなかったのです
次の機会には
箱根からの富士や
太平洋のご来光を
と考えております
旅を支えてくださった皆さん
有難うございました
今回も
何事もなく
旅を終えられそうです
またよろしくお願いします



















