当然、慣れ親しんだ阿佐ヶ谷はもうそこに無かった。通った喫茶店も雨宿りしたバス停も全て歪なコンクリートが飲み込んでいた。真っ赤なスプレーで

『ここは ほんや』

『ここは おふろ』

『ここは はんばーぐ』

『このさき みんなのおうち』

『1』

『2』

『3』

『4』

『5』



背中に41と刻まれた私は当該するコンクリートを探した。大きな杉の木だ。もともとは神社、お祭り。6歳の記憶が蘇る。わたあめを落として泣き喚く私をおばあちゃんが宥めている。



あった41。他のコンクリートより少しだけ低い。別に気にならない。中で荷物を下ろすと1分もしないうちに役員がやってきた。


「まもなく食事です。食事が運ばれてから2時間以内に消灯してくださいね。明日は朝から仕事です。」


明日の仕事はなんですか。


「杉刈りです」









運ばれてきた焼きそばはいつかの土曜日の味がして残すことが出来なかった。