品質不良を早期解決! タグチメソッドをExcelで手軽に使いこなす<第23話> | 品質安定化設計ラボラトリー日記

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かつて開発業務で活用した「品質不良を開発・設計段階で未然に解決する」タグチメソッド(品質工学)を多くのものづくりエンジニアの皆さんに知っていただきたいと思い、そのために自分自身も学び直しながらブログでご紹介してゆきます。

6.「送風機の騒音の低減」での

  望小特性の解析事例

 今回は望小特性の一例として

「送風機の騒音の低減」を取り扱います。

 

<今回の内容>

(1)因子(制御因子、誤差因子)と

  水準の設定

(2)直交表への割り付け

  (内側直交表、外側直交表)

(3)実験の実施とデータの取得

(4)SN比と平均値の算出

(5)重回帰分析による

  SN比改善因子の特定

(6)重回帰分析による

  平均値改善割合の予測

(7)確認実験時の注意

 

(1)因子

  (制御因子、誤差因子)と

  水準の設定

 一般に排気ガスの量、劣化、発熱、振動、

PCなどの応答時間、そして

本事例のような騒音など、

負の値を取らない特性値が

小さければ小さいほど良いという静特性を

「望小特性」と言います。

 

 そこで、送風機の騒音に関わる

誤差因子の水準を設定しました。
 

 

 誤差因子は現実に起こり得る範囲で

最大限に水準を振っております。

 

 これらの誤差因子に対抗して

騒音低減のための制御因子を7種類考え、

うち1種類は2水準、残り7種類は3水準を

設定しました。

 

 

 制御因子も現実に変動可能な範囲

(=機能限界)まで

最大限に水準を振っております。

 

 従来仕様の水準は第2水準に設定すると、

後の解析が楽になります。

(赤文字部分)

 

(2)直交表への割り付け

  (内側直交表、外側直交表)

 2水準の誤差因子3種類は、

L4直交表に則って外側直交表に

割り付けることができます。

 

 

 一方、2水準が1種類、3水準が6種類の

制御因子は、L18直交表に則って

内側直交表に割り付けることができます。

(今回は合計7種類の制御因子なので、

「8列」は使用しません。)

 

 

 

 こうして、タグチメソッドの主体となる

直交実験の実験計画表が完成しました。

 

 

 次に、この実験計画表に則り、

制御因子18通り*誤差因子4通り

=72通りの条件での実験を実施しました。

 

(3)実験の実施とデータの取得

 参考文献では今回の事例につき、

測定方法についても、

「騒音」という特性の単位についても、

記述されておりませんが、

音源(送風機)に対する方向と位置を決め、

その決まった位置と方向に音量計を設置して

騒音の測定を実行したと考えられ、

単位はdB(デシベル)と考えられます。

 

 かくして、直交実験のデータが得られました。

 

 

(4)SN比と平均値の算出

 制御因子の18条件各々につき、

ばらつきの指標となるSN比と平均値を

求めました。

 

 

 望小特性の場合、

SN比と平均値の計算式は、

 

SN比=-10*log(Σy²/n)

平均値=Σy/n

 

となります。

(但し今回は、n=4)

 

 なお、

Σy²はExcelの「SUMSQ」関数で計算できます。

 

 

 また、

平均値はExcelの「AVERAGE」関数で計算できます

 

 

(5)重回帰分析による

  SN比改善因子の特定

 解析に先立ち、

制御因子の各水準をダミー変数に置き換え、

従来仕様の第2水準を削除して

冗長性を排したSN比と平均値のデータを

作りました。

 

 

 このデータでSN比について重回帰分析を

実行し、切片と各制御因子の第1、3水準の

回帰係数を算出しました。

(第2水準の回帰係数は0)

 

 

 この結果から各制御因子について

回帰係数の変動幅(レンジ)を

SN比への影響度としてグラフ化し、

影響度ベスト4の制御因子と、

その中で最も回帰係数の高い

(=改善効果の高い)水準を選出しました。

 

 

 通常、品質工学では

SN比の改善には全制御因子のうち

半数が有効に利用できれば良いと

考えられております。

 

 このベスト4によるSN比の増加分を

「利得」と呼び、

1.50(db)と算出しました。

 

 

 

 ばらつき幅(分散σ²)は

従来仕様に比べて1.41分の1

即ち約70%に低減できることが

予測されました。

 

 

 標準偏差σでは従来仕様に比べて

84%に低減され、言い換えれば

16%減じられると予測されます。

 

(6)重回帰分析による

  平均値改善割合の予測

 今度は平均値について重回帰分析を

実行し、切片と各制御因子の第1、3水準の

回帰係数を算出しました。

(第2水準の回帰係数は0)

 

 

 この結果から各制御因子について

平均値が最小となる水準を選出しました。

 

 

 結果はSN比最大の水準の組み合わせと

一致しましたが、それもそのはずで、

望小特性においてはSN比最大

(=ばらつき最小)が同時に

平均値最小の意味も持つからです。

 

 次に重回帰式を使い、切片と

SN比の改善ベスト4の制御因子の

最適水準での回帰係数を代入し、

従来仕様とSN比最大での

「騒音」の平均値(予測値)を算出しました。

 

 

 従来仕様での平均値は43.62(dB)、

SN比最大での平均値は36.07(dB)で、

差分として、

 

43.62-36.07=7.54(dB)

 

だけ改善されたことになり、

割合としては17.3%の改善になります。

 

(7)確認実験時の注意

 ここではタグチメソッドでの解析方法を

学ぶことが目的であるため、

確認実験を省略しますが、

本来は重回帰分析による推定が正しいことを

確認実験で確かめなくてはなりません。

 

 上記のSN比最大の条件で確認実験を行い、

実験データでSN比と平均値を計算し、

上記で計算したSN比と平均値の予測値と

比較します。

 

 SN比と平均値それぞれについて、

確認実験データと予測値の差が

±(20~30)%以内であれば

予測は正しかったことになります。

 

 以上を持ちまして、

「送風機の騒音の低減」の事例を

終わります。

 

 

 本日はここまでとします。

 ご精読、ありがとうございました。

 

 次回は、望大特性の一例として、

「コーヒーショップの顧客満足度の向上」を

取り扱います。

 

 ご期待ください。

 

<参考文献>

 広瀬健一・上田太一郎/共著

 「Excelでできるタグチメソッド解析法入門」

 同友館

 

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