危険だ。
危険危険危険危険。
頭の中で鳴り響く警報。
瞬く赤色灯。
あの男は危険。これ以上、
これ以上近付いたら、確実に喰われる。
危険だ。
喰われる。鋭い牙で噛み砕かれて、すべて。
すべて、奪われる。
キケン。逃げなくては。
「新一……」
逃げて逃げて、逃げて辿り着いた先の部屋。
頼りなく零せば伸ばされる腕。
「どうした…?」
快斗、と指先は柔らかく、髪を撫で。
頬に触れて、そこを包む。
「…新一、」
温もりに、安堵の吐息が落ちた。
持ち上げられる瞳。そこに映る自分の、情けなくも焦燥しきった顔に堪え切れず、
きつく目を閉じて、触れる温もりに額を押し付けた。
―――ええ加減、認めたらどないや?
安息を、
与えてくれる筈の人物の傍に居るというのに。
触れているのに、頭の中を過ぎる声は別の人間のもの。
―――喰われに来たんは自分やろ?
黒羽、と。
耳朶をなぞった声が忠実に、憎らしいほど忠実に、頭の奥で再現され。
知らずに唇を咬んでいる自分が居た。
「……っ」
何度も何度も、繰り返される声音を振り払うかのようにきつく、
傍にある体温を抱き締める。
流される。溶かされて、すべて、奪われる。
あの男は危険。誰にも侵略されてはならないこの胸の奥に、踏み込んでくるあの男は。
危険。
「新一…っ」
抱き締めた、身体の名を呼ぶ。
そうすれば囁き続けるあの男の声音が、消えるかと思った。
思った、のに。
「……ぁ、」
「快斗…?」
ふわりと、偶然にも鼻腔を擽ったのはどうしてか、
あの男の、匂い。
「……新、一?」
顔を上げ、その瞳を見遣る。
何も、云わない瞳。けれど。
ふわりと、また。あの男の匂いが。
―――逃げたいんやったら逃げればええわ。
その匂いに男の声が、重なる。
―――好きなだけ逃げたらええ。せやけどな…
思い知ることになるで?
云って男は愉しげに、目を細めた。
その瞳に。
警告音の響きを聞き取って、逃げたというのに。
逃げついた先で、その男の思惑を知るなんて。
新一の身体から、あの男の匂い。
―――逃げられる、思うんやったら逃げてみぃ。
退路は一つ一つ確実に、潰されていく。
―――認めざるを得んよぉに、したるから。
響く声音。頭の中で、何度となく。
重なる警鐘。高く低く、危険を告げる音。
その音に従って逃げた先。辿り着いた安息の地。
なのに。
ここはもう既に、あの獣の住まう、檻の中。
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平次に本能的な危険を感じて逃げる快斗。
逃げた先は新一の元で、快斗は新一に安息を求めるけど、
新一の身体からは平次の匂いが…。
「ここも押さえられたか」って感じで愕然とする快斗サン。
ってのを妄想したので形にしてみた。
謎です。すべてが謎です。雰囲気書き逃げ以外の何者でもありません(笑)
よってツッコミ無用ー!(笑)