「お父さんの名前、なんて言ったっけ…?
漢字を紙に書いてくれ」
あらら…息子の名前を…
書いてあげると、額を叩きながら
「そうだったーボケたー
漢字をみんな忘れる」とニコニコ。
イヤイヤ、漢字というより息子の名前を忘れる方が…
でも、その日行った皮膚科のことはよく覚えていた。
「車で連れてってもらった。
行ったら38番だった。
いっぱい人が並んでて、ずっと待った。
ヘンな菌は入ってなかった。
(痒いところに菌が入っているかもしれないと心配してた)
向いの薬屋さんで薬をもらってきた」
なんと見事な記憶!
そして一日後にはもう、痒いことも薬を塗ることも忘れる。
不思議な忘却…
ある日、デイサービスから持ってきた作品。
みんなでカルタを作ったらしい。
なんだかグッときた。
こんな気持ちでいるんだ…
長生きするって、こういうことなんだ…
夫は「友だちなんていたのか?」なんて言う。
オイ!息子!
90才の体も心も未経験。
想像できないことがあるんだろうな…
それでも、いつもニコニコと穏やかに過ごしているおじいちゃん。
誰彼には真似できないことなのかもしれない。
Merci