新年会CASで発表した声劇「さようなら、僕に光をありがとう」の台本です
描いてくれたのは柊くん(@hiiragi0701)です
もし使用される場合は僕(@satsuki_pente)or(@satsuki_tcas)、もしくは柊くんに断って返事をもらってからにしてください


「さようなら、僕に光をありがとう」

登場人物
(ひかる)    セリフ数:43
【瑠美の兄である主人公。普段はクールで大人しいが、内に熱いものを秘めた優しい性格をしている。嘉瀬のことは苦手なようで…。】
瑠美(るみ)    セリフ数:20
【光の妹。兄の面倒見がよく、光が怪我をする度に嘉瀬の元へ連れていき診察してもらっている。】
嘉瀬(かせ)    セリフ数:22
【光と瑠美が来た時、2人の世話をよくみてくれる。父のような兄のような…。嘉瀬と光、瑠美の関係とは……?】
理人(りひと)    セリフ数:16
【淡々としていて、本人は感情を持っていないと言うが…。嘉瀬と深い関係にありつつも彼に忘れられた存在。】



瑠美「こんにちは~!」

嘉瀬「いらっしゃい。瑠美ちゃん、光くん」

「…」

瑠美「ほらっ!お兄ちゃん!嘉瀬さんに挨拶して!」

嘉瀬「こんにちは、光くん」

「……こんにちは」

瑠美「もう!お兄ちゃん!そんな怖い顔しないの!」

嘉瀬「ははは。ほんとに光くんには嫌われちゃってるみたいだね」

瑠美「いつもすみません…」

嘉瀬「いやいや、いいんだよ。わたしはこうやってふたりがウチに来てくれるだけで嬉しいからね。…ところで、今日はその脚を治しに来たのかな?」

瑠美「はい…骨折しちゃったみたいで…」

嘉瀬「なるほど。じゃあ光くんを診る準備をするから少し別室で待っていてくれるかい?今回も泊まっていくんだよね?」

瑠美「はい。お兄ちゃんが直るまでの間はお世話になります。よろしくお願いします」

嘉瀬「こちらこそよろしく。では少し待っててね」

嘉瀬、去っていく

「…」

瑠美「お兄ちゃん…嘉瀬さんのこと…嫌い?」

「嫌いってわけじゃないけど…何で俺が怪我をしたらいつも嘉瀬さんなんだ?知り合いだからって別にわざわざこんな遠くまで診てもらいに来る必要ないだろ」

瑠美「いいじゃない、せっかくタダで診てくれるって言うんだし!」

「それはそうだけど…なんか性に合わないんだよな…あの人…」

瑠美「悪い人じゃないし、そう軽蔑しないで、お兄ちゃん」

「まぁ…瑠美がそう言うなら…」

瑠美「ふふ、お兄ちゃん、脚が直ったらまた一緒にサッカーしようね!瑠美、海にも行きたい!」

「おう。直ったらサッカーでもなんでもしてあげるし、海にも俺が自転車で連れてってやるよ」

瑠美「やったぁ!ありがとうお兄ちゃん!」

「いえいえ。瑠美の幸せが俺の幸せだからな」

瑠美「嬉しいなぁ…一緒に海に行くためにもしっかり直してね」

「ああ、わかった」

嘉瀬「光くん!準備ができたから来てくれるかい?」

「…それじゃあ行ってくるよ」

瑠美「うん。瑠美は別の部屋で待ってるね」

「おう」

ーー嘉瀬の部屋

嘉瀬「いらっしゃい、光くん」

「よろしくお願い…します」

嘉瀬「光くん。今日は治療の前に少し話があるんだ」

「…何ですか?」

嘉瀬「単刀直入に言うと、君たちはロボットだ」

「…は?」

嘉瀬「そして、光くん。君の脚を直すには瑠美ちゃんが必要なんだ」

「ちょっと待ってください。全然話についていけないんですけど」

嘉瀬「それは無理もない。何せ自分を人間だと思い込むようにわたしがプログラムしたからね」

「…あなたが俺たちを作ったって言うんですか?」

嘉瀬「いかにも。光くんと瑠美ちゃんはわたしがつくったんだよ。そして瑠美ちゃんはいわば光くんの部品の一部なんだ」

「百歩譲って俺たちがロボットであるとしましょう。ですが、それが今回の怪我とどう関係するんですか?」

嘉瀬「言っただろう?瑠美ちゃんは光くんの部品の一部で、君の体を直すには瑠美ちゃんが必要だと」

「はい…」

嘉瀬「つまり、光くんが怪我をしたら、瑠美ちゃんの一部がその部品となって怪我を直すんだ」

「今までの怪我もそうやって直してきたんですか?」

嘉瀬「ああ。しかしそれは擦り傷や打撲の話…。今回は脚の骨折という重傷だ。これを直そうと思えば瑠美ちゃん全てを使わなきゃ直せない」

「えっ…てことは…俺の脚を直せば、瑠美は消えてしまう…?」

嘉瀬「察しが良くて助かるね。その通りだ。だが心配はいらない。君の脚を直したら瑠美ちゃんがいたという記憶は君から消去してあげるからね」

「そんな…それ以外に脚を直す方法はないんですか」

嘉瀬「悪いが、ない。そもそも瑠美ちゃんは君の怪我を直すために存在しているからね。もしここで君が瑠美ちゃんで脚を直さなければ、君の脚は一生直らないことになる」

「そんなの…信じられません」

嘉瀬「まぁ、そうなるのは仕方がない。1日ゆっくり考えるといい。君がどちらを選んでも、わたしは構わないよ」

嘉瀬、去っていく

「俺達がロボット…?俺の脚を直したら瑠美が消える…?…バカバカしい…そんなの嘘に決まってる…。…でも、もしほんとうなら…瑠美が消えなければ、俺の脚は一生直らない…?くそ!!どうすりゃいいって言うんだよ!!」

理人「こんにちは」

「うわぁ!!だっ、誰だお前!?」

理人「僕は理人。君と同じ、嘉瀬さんが作ったロボットです」

「ロボット…?俺達以外にもロボットがいたのか!?」

理人「はい。しかし僕は君や瑠美ちゃんと違って失敗作です」

「失敗作?」

理人「ええ。嘉瀬さんはずっと人間と同じような感情を持ったロボットを作る研究をしていた。しかし僕にはその感情というものが芽生えなかった。だから失敗作として、もう嘉瀬さんには忘れられてしまった存在です」

「…そ、そんな理人が、どうして俺の前に…?」

理人「光の脚を直すためです」

「え!?俺の脚を直せるのか!?」

理人「はい。瑠美ちゃんの代わりに僕が部品となることで元通りにすることができます」

「本当か!?…あれ、でもそれだとお前は…」

理人「ええ、消えてしまいます。ですが、ロボットは製作者に忘れられたら時期に消えてしまう運命にあります。だから、そんな風に消えるくらいなら、僕は光の怪我を直して消えたい」

「そ、それはダメだ!ロボットだからって、この世に生まれてきたんだ。そんな風に消えるべきじゃない!きっと他にも俺の脚を直す方法が…」

理人「大丈夫です。僕が君の部品の一つとなったとき、君の記憶から僕の存在は消える。製作者である嘉瀬さんにも忘れられた僕は、もともとこの世に存在しなかったことになる」

「そんなの…悲しすぎるだろ…」

理人「悲しい…?それは僕にはわかりません」

「せっかくこの世に生まれてきたのに…そのことさえ無かったことになるなんて…」

理人「ロボットの宿命なんです。光、君には瑠美ちゃんという大切な人がいる。その人とまた今まで通り過ごすためには、僕が代わりになるしかないんです」

「…どうしてお前はそんなに俺たちに優しくしてくれるんだ…?」

理人「さぁ…わかりません。ですが、今日2人がここに来た時からずっと見ていましたが、2人の楽しそうに話す様子を見て、このまま離れ離れにしたくないと思いました」

「それだよ」

理人「え?」

「それが人を思いやるってことだよ!理人は失敗作なんかじゃない。俺や嘉瀬さんなんかより、よっぽど人間らしいよ!」

理人「人間…らしい…そう言ってもらえるとなんだか気分が高揚します」

「それが嬉しいって気持ちだよ。理人にだってちゃんと感情はあるんだ。だからこそ、俺なんかのために消えてほしくない」

理人「ふふ、光は優しいのですね。ですが、製作者に忘れられたら消えてしまうという運命は変えられないのです」

「そんな…」

理人「光、最後に僕に感情というものを教えてくれてありがとう。僕は光の一部となって、ずっと一緒にいます」

「理人…俺、絶対お前のこと忘れないから!今日ほんの少し話しただけだけど、俺の一部になった後も絶対に忘れない!!」

理人「ありがとう…光…君に出会えて良かったです」

ーー翌朝

瑠美「嘉瀬さん本日はどうもありがとうございました」

嘉瀬「いやいや、わたしは何もしていないよ。まさか朝起きたら怪我が直っているなんて。一体何が起きたのかわたしにもわからない」

瑠美「きっとお兄ちゃんの直したいという思いが通じたんですよ!」

嘉瀬「いやぁ…こんな奇跡みたいなことがあるとは…」

「瑠美、先にバス停まで行ってるぞ」

瑠美「あっ、お兄ちゃん待ってよ~!それでは嘉瀬さん、これからもよろしくお願いしますね」

嘉瀬「ああ、また怪我したらいつでもおいで」

ーーバス停

瑠美「も~お兄ちゃん早いよ~」

「瑠美がいつまでも嘉瀬さんと話してるからだろ」

瑠美「それにしても、ほんとに直って良かったね。何で直ったんだろうね」

「さぁ。目が覚めたら直ってたんだ」

瑠美「そんなことがあるなんて…ていうか、お兄ちゃんさっきから何読んでるの?」

「ドイツ語の本だよ」

瑠美「…お兄ちゃん、ドイツ語なんて読めないでしょ」

「だからこうやって今勉強してるんだろ?…あ、そういえば、ひとつだけ俺のお気に入りの言葉があるんだ」

瑠美「え!なになに!?聞かせて!」

「『リヒト』…『ひかり』って意味だよ」