こんにちは。

「家族」と「葬送」をテーマに

書いております、ライターの橘さつきです。

 

「もっと何かをしてあげたかった」

というのは、実は私が取材で出会った

栄子(仮名・58歳)さんの言葉なんです。

 

 

施設に入所している高齢の義父母に

「とうとう、何もしてあげられることが

なくなっちゃった」と言うのです。

 

たまに面会に行くときに、

好物を届けてきたのが、

だんだんと、食べられるものも限られてきて、

ついに誤嚥の心配があるから、

差し入れも出来なくなったと。

 

コロナ禍で面会禁止の時期もあったり、

そんなに頻繁には介護施設の訪問は

できませんでした。

 

栄子さんは一応長男の嫁。

結婚当初から長男の嫁の重圧に苦しんで

きました。

 

どこの家にでもある舅姑の確執も

長年経験しました。

 

義母の認知症が進み、施設に入所すると、

義父も認知がすすみ、入所することに。

 

それまでは介護ヘルパーに支えられて、

二人で頑張って暮らしてきたそうです。

 

認知症が進んだ義父母は

過去の嫁との確執を忘れて、

無邪気に栄子さんの訪問を

ただ喜んでくれるそうです。

 

ようやく、栄子さんもわだかまりを

溶かすことができました。

 

 

介護施設探しから、

手続き、そして一番大変な

本人への説得は息子である

夫と義弟でしてくれました。

 

入所までの苦労を

義弟夫婦と四人でタグを組んで

分かち合えたことで、

昔は理不尽にも

すべてが長男の嫁の責任

だったということを、

互いに理解し合えたそうです。

 

世の中で多くの人が

親の介護に苦しんでいるのに、

「苦労をしていなくて、申し訳ない」

というのです。

 

だから、私が

「そんなことないです!

お嫁さんに『もっと何かしてあげたい』

だなんて言ってもらえたら、最高に幸せ

だと思いますよ!」

 

彼女の両親は既に他界しています。

ご両親ともひと月ほどの短い闘病で

旅立たれました。

 

だから、もしも義父母にこのまま

何もできないで見送ることになったら、

「自分は介護の苦労知らずのままの、

未熟な人間になってしまう」

という栄子さん。

 

もしも、義父母の方が旅立つ日がきて、

「もっと何かしてあげたかったな」

と彼女が思ったら、

 

それも、なんて素敵なお別れなのでしょう!

 

「最高のお嫁さんですよ!」

と私は伝えました。

 

「その気持ちを絶対に後悔にしないでね。

お互いに幸せなお別れですよ!」

 

私の言葉にビックリしていた彼女でしたが、

 

「もしも、危篤を迎えたときには、

家族でできるだけそばにいてあげたいと

思います。叶えられたらいいですけど」

 

介護に疲れていないから、言える言葉

なのだと、思いました。

 

葬儀の儀式の場で述べられる

感謝の言葉以上に、

心がこもった素敵な言葉だと

思いませんか?

 

家族が面会に来てくれないと不満に

思う人もいるでしょう。

口先でいうのは簡単。

実行が伴わなければなければ

意味がないという人もいることでしょう。

 

でも、人間関係は互いの努力がなければ、

改善しません。

 

見方をかえて、

「何かしてあげたい」と思ってくれる

お嫁さんの気持ちを大切にしたいなと思いました。

 

お互いに義理同士なんだから、

それくらいの気遣いで満足しなきゃ、

幸せが遠のきます。

 

「もっと何かしてあげたかったな」

というお話のウラ話でした。

 

 

 

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