こんにちは。
ライターの橘さつきです。
「家族と葬送」をテーマに書いています。
はじめましての方はコチラ
心の奥に響いた、忘れられない一言って、
ありますよね。
私にとってのその一言は
同じ保育園に通う、
看護師のお母さんの言葉でした。
まだ携帯は持っていない
保育園の幼いこどもでも、
時代の風潮で流行り言葉には敏感で、
意味もわからずに、すぐに口にします。
その頃、子どもたちが
何か気にさわらないことがあると、
すぐに
「死ね!死ね!」と意味も考えずに、
口にするようになりました。
大人たちは、もちろん、
子どもたちを叱ってきましたが、
意味も理解せずに
テレビで覚えた言葉を
口にする子どもには叱っても
「暖簾に腕押し」で
効き目がありません。
ある日のこと、
その日は保育園の保護者会の日でした。
保育園ではお迎えの後に
保育園で親子でお弁当を食べて、
子どもたちは年齢を超えて同じ部屋で
夜まで遊んで待ちます。
興奮して羽目を外すことも。
騒ぐ子どもを前にして、
ひとりのお母さんが
烈火のごとく、子どもたちを前に
怒りました。
「あなたたちはなぜ「死ね」なんて、
簡単に言うの?!
死んだら二度と生き返らないんだよ。
わかって言っているの?
私はね、仕事で毎日、毎日
今日にも死にそうな
おじいちゃんやおばあちゃんの家を
訪問しては、消えつつある命の灯を
一日でも長く保てるようにと、
大事に大事に見守っているのよ!
それなのに、「死ね」とは何なの?!
死んだら、二度と生き返らないんだよ。
わかっている?
二度と「死ね」なんて言うな!」
と烈火のごとく、
雷を落とした母。
側で聞いていた私にも
身体の芯に電流が走ったような
気がしました。
子どもたちは、シーンとして、
その母を見つめ、
じっと聞いていました。
就学前の子どもたちですが、
きっと何かを感じとったのだと思います。
この時、子どもを叱る時は、
大人も本気で叱らなくてはいけないと
知りました。
本気で怒らなくてはいけないときを、
いいかげんにしてはいけない。
そう肝に命じたのです。
あれからもう20年以上の月日が
経ちました。
その訪問介護の看護師をしていた
お母さんは、その後
賭け事やお酒におぼれた夫と
離婚して、地方の実家に戻って、
三人の子どもを育てました。
地方から東京の職場に通う日々で、
身体を壊されたこともあったようです。
人生は思うようにいかない
ものですね……。
あの時、自分の子だけでなく、
子どもたちを本気で叱ってくれた
素敵なお母さんでした。
あの家族が幸せに生きていてほしいと、
心から願って
いつか再会できる日が来ることを
祈っています。
あの日の「ありがとう」を伝えたくて!
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