この「MONEY」は1984年発売の『DOWN BY THE MAINSTREET』に収録されている。1984年だから、所謂バブル景気の始まる1986年より前である。いかにもバブル期の歌のようだが違っていた。あるいは浜田省吾はバブルを予期していたのだろうか?
地方の街に生まれた主人公の少年が、父を早くに亡くしたこともあって貧乏生活を余儀なくされ「金:かね」に対する嫌悪が増してゆく。少年が周りの者すべてが「金」によって狂わされている、と思うようになるのは自然なことであろう。しかし自分自身も結局は「大金」を得たいと思うようになってしまった。概ねこのような内容である。
「金:かね」をテーマにした歌は珍しい。喜劇王チャールズ・チャップリンの言葉「人生に必要なものは、勇気と想像力。それと、ほんの少しのお金」に表されるように、あくまでお金は二の次なのである。そのような風潮は日本人に特に強いように思える。
しかしながら浜田省吾は世界中皆、金の亡者になっていると書いているのである。確かに多くの人は心の中では金が欲しいと思っているのではないか。それをストレートに訴えているのである。そしてこの曲は浜田省吾のハードロックの曲の中でも、たぶん1,2を争う激しさである。コンサートでの盛り上がりは最高潮となる。
筆者も「金」は欲しい。しかし年金生活の身になっては、今更稼げないのは自明である。宝くじを買っても当たる可能性はほぼゼロである(買わなければ完全なゼロ)。だから金に関しては「稼ぐ」ではなくて「節約」である。侘しいけれどほかに選択肢はない、と諦念しているのである(本当か?)。仕方無いから「MONEY 」を聴いているのである。
ところで米国とイランとで戦争が始まった。これによって株価は大幅に下がっている。そして今値上がりしているのは「金」だそうだ。ただし「かね」ではなく「Au」である。
旧建築専科 20200109