「増税楽しからずや」と庶民に「モヤシを主菜に」のすすめ──怒り心頭のトヨタの広告 | TABIBITO

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いやいや、驚いた。
「臆面もなく」とか「厚顔無恥」などという言葉よりも、ここまで来ると「盗人猛々しい」の方があてはまるのではないかと思いたくなる。
 
そーっ、と黙っていればいいものを、全国紙に大きな広告を出したトヨタ自動車。
 
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23日付の「日本経済新聞」に掲載した広告だ。
 
「『やり方』を発明しよう。」との見出しで、何を言っているのかと思えば、「消費税増税」についてだ。
 
「この4月から消費税が8%に上がった。家計のやりくりは大変だが、これを機会に生活を見直せば、ムダはいくつも見つかるはず。不要なものを買ってはいないか。水光熱費はもっと節約できるのではないか。」
そして「例えばモヤシのような安価な食材も、工夫次第では立派な主菜になる。節約は実は生活を豊かにするものだと気づけば、増税もまた楽しからずやだ。」と書いている。
 
庶民に、こう“指南”したかと思ったら、トヨタの車検サービスを例に、“ムダのない”いわゆる「トヨタ生産方式」の考えを自画自賛している。知恵を出して「やり方」を変えること、「発想の転換が、人々に笑顔をもたらすなら、お安いものである」としている。
 
この広告を見て「こら!ちょっと待て!何様のつもりだ!」と言いたい。
 
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トヨタは、自動車販売台数で、一昨年、昨年と2年連続世界第一位となった。
昨日、23日には、2013年度のグループ年間の世界販売台数が1000万台を初めて超え、前年度比4.5%増の1013万台だったと発表した。トヨタ式生産方式を自慢したいのもわかる。
 
しかし、トヨタについては、これまで労働者の「過労死」や下請け・孫請けいじめなどが常につきまとってきた。進出先の外国では、インド、カナダ、アメリカ、フィリピンなど各地で労働争議が起きている。
 
そして、消費税との関係では、いつも指摘される問題として「輸出還付金」(輸出戻し税)がある。
「輸出戻し税」については、私のブログでも再三取り上げてきた。
 
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本来、税金の「還付」といった場合は、サラリーマンの「年末調整」のように、自分で納めた税金を、後から戻してもらうことを意味する。ところが、この「輸出戻し税」は、自分が納めてもいないのに、他人が納めた税金を懐に入れてしまうというものだ。
例えば、自動車メーカーや商社が国内から部品を調達して商品を輸出すれば、実際には下請け企業が払った消費税が、自動車メーカーが納めたものと見なされ、還付されるのである。

そして、消費税率がアップすると輸出大企業は儲かる。財界が大企業が、消費税増税に賛成なのはこうしたカラクリがあるのである。
その上、法人税引き下げをはじめ、大企業優遇税制で、さらに税金をまけてもらおうというのだからあまりにもムシがよすぎる。

元静岡大学教授で税理士の湖東京至氏の試算による「輸出上位10社の還付金」によれば、輸出戻し税の最高はトヨタ自動車で、税率5%で1801億円だったものが、税率8%となり2882億円へと、1081億円も増える。ちなみに、日産は906億円から1450億円、ソニーは635億円から1061億円になるという。
 
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輸出大企業の本社のある税務署では、毎月月末になると税金の徴収ではなく、「還付金」を確保するために奔走し、不足分を他の税務署からかき集めるのだそうだ。
2月26日の衆議院財務委員会では、2011年度の消費税の輸出還付金が納税額を上回り、消費税収支が赤字になっている税務署があることを国税庁が認めた。トヨタのある愛知県豊田税務署は、11年度の納税額が266億円だったのに対して、還付金は1360億円で、差し引きで1092億円の赤字だった。
2位は日産自動車の本社のある神奈川税務署で、449億円の赤字だったという。
 
しかも、消費税増税分以前に、トヨタはもともと下請けを雑巾のように絞るので有名だ。
■「消費税の不都合な真実──中小企業の叫びを聴け」という記事がわかりやすい。
■「トヨタ下請けの悲痛な叫び~年間3000億の原価低減と、生産拠点合理化の裏側」
 
 
「増税もまた楽しからずや」などと言っているが、庶民や中小業者にとっては、どんなに「工夫」や「節約」したとしても「楽し」くなどなる余裕はない。
 
すでに消費税率の変更に対応できる新型のレジに買い替えられなかった新潟のスーパーが破産した。
そして私の周りでも、長年地域に密着して営業を続けてこられた、食品関係の社長さんが「もう、これが限界」と店を閉じる。他にも商店主や中小企業経営者の方に話を聞くと同じような言葉を漏らす。
夏以降には、倒産、リストラ、生活難による自殺者も増えるのではないかとの予測もある。
 
 
江戸時代の庶民は幕府から高い年貢をとりたてられて、農民には「禁令」まで出されて、「麦・あわ・ひえなどを食べ、米を多く食べてはいけない」とされていた。
現代でも庶民は消費税という年貢に耐えて「安いモヤシを食べろ」ということか。
 
消費税がアップされても、濡れ手に粟の儲けを手にするあなた方に「モヤシを主菜に」「増税楽しからずや」なんて、言われたくない!──そう思うのは私だけではないのではないだろうか。
 
 
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