八十九歳今年最後の薯を植う 博

啓蟄や辞書にいつもの虫めがね 真砂雄

遺影撮るための正装鳥雲に キヨ子

『野火』三月号「野火歳時記」より。

 老いを詠んだ句。どの句も屈託がない。屈託なく歳をとりたいと思う。でも、そうもいかないのが人間だ。薯をうえたり、虫眼鏡で文字を読んだり、正装して写真に収まったり、十七音にしてしまえば一段落つく。やっぱり季語は便利だ。余計なことを言わなくても済むから。知らん顔をして鎮座している。

近所のお宅の垣根の沈丁花

 

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