野火同人の夫婦の句集。微笑ましいとというか、とても羨ましい。我家の俳句に関する家庭環境とはまったく違う。ほとんど無関心、それはそれで気楽でいいのだが。

縞馬の縞の隙間や冬の蠅 秀子

やわらかき父の手の平蜜柑剝く 〃 

雪晴やすぐ目の前の岩木山 徹夫

除雪車の後行くバスや八甲田 〃

 でも、作風は当たり前だが、少し違う。冬の句をランダムに引いてみた。材料として選ばれている「縞馬の縞の隙間」と「父の手の平」に向けられているのは眼差しで、「岩木山」と「八甲田」に向けられているのは視線だという気がする。眼差しは感情が先にあるが、視線は直視だと思う。そこには自ずから情感の濃淡の差が生まれる。秀子さんの句は徹夫さんの句と較べて情感が濃く余情は深い。徹夫さんの句は情感は制御されているが、描かれた情景の陰影は濃い。旅吟は斯くあるべしだと思った。

エッセイ集と三点セットの箱入り句集

 

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