堤行くわが影鴨に伸びゆけり 悌二郎

春雨や初午よりの古幟 〃

 一句目、昭和五年の作なので、この年悌二郎は三十一歳である。青年の句としてはいやに落ち着いている。今の青年俳人はまずこんな句は作らないだろう。鴨のいる川面に自分の影が映ったというだけの句だが、この影の陰影は深い。我が影は心の影でもある。二句目、春雨と初午、二つの季語を臆することな使用している。古幟も含めて三つの言葉を助詞でつないでいる句だ。「春雨や」なので春雨がメインの季語なのだろう思われるが、悌二郎は春雨や初午よりも古幟を詠みたかったのだろと推測される。やはりこの句も老練な句だ。でも、当時の青年俳人はこんな句を目指していたのかも知れない。

春日部駅裏の彫刻。タイトルは「おでかけ」

 

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