家毎に門橋持てり春の川 悌二郎

堰近く湛へし水や菖蒲園 〃

 門橋という言葉は広辞苑に無い。門に入るための橋ということだろうが、ちょっと違和感をもった。「春の川」も橋があるので不要であるように思う。普通なら「花辛夷」とか「八重桜」とか、あるいは「蝶の昼」とか「燕来る」とか、植物か動物を持ってきたいところだ。句会に出してもそうな批評を受けそうだ。しかし、その辺りが悌二郎の美意識かもしれない。二句目も正しい語法なら「堰近く水湛へたる菖蒲園」か「堰近く水を湛へて菖蒲園」だろう。水を湛えた堰は目の前にあるのだから。でも、やっぱり二句とも悌二郎らしい柔らかな手触りのようなものを感じる。

晩夏の雲。

 

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