戸板康二著『季題体験』富士見書房を捲っていたら、秋の章に柿をについて書かれた一節があった。

 銀座の千疋屋で、立派な箱に入れた富有柿の粒ぞろいのを売っていて、むろん、それはそれで結構だが、私は農村で分けてもらったのを、カバンにあり合わせの新聞紙で包んで入れて帰るという庶民的な果物というふうに思っている。

 まったく同感だ。それにしても、此のところ果物はは高すぎる。果物に限ったことではないようだが、少し昔の田舎ではその辺に転がっていた柿や梨がショートケーキと同じ位の値段で売られている。疵物でも歪でも何でもいいので「持ってけ泥棒」という感じ売って欲しいと思うのだが、そう簡単にはいかない事情があるのだろう。

 私の住む町の郊外では、今正に柿の秋だ。稲刈りの真っ最中だが、田んぼの中に点々とある農家の庭先の柿がたわわに色づいている。台風16号で落ちてしまわなければいいのだが。

柿たわわ。

人ごみの中手みやげの枝葉柿 孝作

塗盆の曇るや柿のつめたさに 春草

潰ゆるまで柿は机上に置かれけり 茅舎

『季題体験』に引かれていた3句。

 

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