亡き母の摺木摺鉢冷し汁 

 野火俳句会のウェブ句会に投句した自作。兼題が台風、芒、調理道具だった。拙い句であることは自分でも分かっていたが、捨て難かったので出してみた。予想通り0点。逆選に取ってくれた方が一人おりちょっと嬉しかった。去年まで夏の帰郷のたびに母の冷し汁で饂飩を食べるのが楽しみだった。調理した擂鉢のまま食卓に乗ったのだ。やっぱり母の味なのである。自分でも作ってみたがあの味を再現することは出来ない。幼い時から慣れ親しんだその風味や味噌加減をもう味わうことができないとうい喪失感は深い。

台風を生み台風の還る海 由紀

 特選で取った句。大きな被害を及ぼす台風は極めて恐ろしく憎たらしいが、この句何だか爽やか。海が暴れ者の台風を海が叱っている感じがする。台風にとっても海は母なのだ。

 

 ウェブ句会は投句締切りの三日前に兼題が送られてくる。選句期間は概ね一日。通常の句会よりも考える時間は多い。そのためか、兼題の作品は通常の句会の席代よりも類想の句が多いようだ。色々考え過ぎて大人しい句になってしまうのだろう。選句、選評も然り。理屈で取って、理屈で評することになる。でも、ウェブ句会は何だか楽しい。一週間の半分を俳句に浸かっていられるから。