検査を受けるために仕事を休む都合上、上司である院長には、右胸だけでなく左胸にも疑わしい箇所があることを話していた。
生検検査の結果を聞いた翌日。
左胸は非浸潤性乳管癌とわかり、同時性両側乳がんであることを伝える。
紹介先の病院でどんな治療方針になるかまだわからないけれど、両側の手術が必要なのはたしかで、ご迷惑おかけする期間がどれくらいになるのか、色々はっきりしたらまたご報告ご相談させてください、と伝える。
『うーん、そうかぁ。それは残念だね。なるべく小さな治療ですむといいね。仕事のことは、本当に気にしないでいいからね。』
悲痛な表情で、言葉を選びながら話してくれているのがわかる。
病気になってすみません。
仕事を休んですみません。
こんな重い話を聞かせてすみません。
迷惑かけちゃうな、聞く方も負担が大きいだろうな…気がつけば『すみません、◯◯でした』『◯◯についてはどうなるかはまだわからなくて、すみません』と何か説明するたびに謝ってしまう。
ただでさえ暗い話なので、表情や声のトーンに気をつけたつもりだが、ちゃんとできていただろうか。
上司は余計なことを言わない人なのでまだ話しやすいが、私の中で両側乳がんであることをまだ消化出来ていなくてできれば話したくない時期に、気遣いながら他人に説明をするのは、本当にしんどい。
でも、伝えないと協力を得られない。
この日は他のスタッフには結果を伝えず、『クリニックでやる検査は終わったので、来週紹介先の病院に行ってそこでどんな話になるか、ですねー。』とだけ話した。
時々チクッと胸や背中に痛みがあると、
【がんが大きくなってるのか?転移か?】
と不安になるが、仕事中はそんな不安も一瞬だ。
仕事をしていると、両側乳がんであることを忘れられる。
仕事をすることで社会とつながっていられる。
私には大切で必要な時間だ。
手術したら、あちこち痛くて仕事できないかな。
どのくらいの期間で、今の私と同じ動きができるようになるかな。
長く休めば迷惑をかけるし、辞めたほうが私も気にせず療養できるかな。
辞めなくていいと言ってもらえて嬉しいけど、申し訳ないな。
サクッと取って、パッと治って、はい元気!
ドラえもんの道具でもない限り、それは無理かー。