大宮妄想小説、BLです。

ご理解のある方のみ、どうぞ。

苦手な方、不快に感じる方はご遠慮下さい。

 

 

 

 

こちらは夜の影シリーズの番外編です♪

 

夜の影↓

 

One Love(夜の影 続編)↓

 

本編を読んでいなくても

楽しめる内容になっているとは思います!

 

本編が気になる方は、上からどうぞ♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

智side



「………もう…まじ、」

「(笑)」

「まじ…ほんと…ごめん、」



いつも猫背な背中を
更に曲げて。

はぁ…と勝手に口から零れる
大きなため息と一緒に”ごめん”を繰り返す俺に。

和がくすくす笑いながら
丸まった背中をぽん、と叩く。



「ねぇ…もうそれ何回目?(笑)」

「……………だって、」

「もういいじゃん(笑)
旅行先でハプニングなんてつきもんじゃない?(笑)」


「………んぅ、」

「まぁ…
さすがにこれは初めてだけど(笑)」




最後の
和の一言で。

がっくり落ちていた肩が
更に大きくがっくり落ちて。

荷物片手に
口から零れる、何百回目のため息。





俺がやらかしていたことに
気付いたのは。

夕方になって
少し日が傾き始めた頃。

到着した旅館の受付で
チェックインを済ませようとした時だった。



”……………へ?ない?”



確かに先週
ネットで予約したはずなのに。

受付の人が何回確認しても
全然見当たらないという、俺達の名前。



”や…でも…たしかに…あれ……?”

”なんかさ。
予約確認のメールとか来てないの?
普通、来るでしょ?”


”あ…ん…………これ、ほら…………”

”……ぁ……お客様………こちら…違います、”

”…………へ?”

”お名前がよく似ておりますが…
こちら、当館とはまた別の御旅館です。”




慌てて
よーく確認してみると。

確かに、ひらがな表記と漢字表記の
名前は同じでも表記が違う
別の旅館を予約したことになっていて。



翔くんと飲みの席で
オススメしてもらった時。

そういや…なんか
似た旅館があるから気を付けて
って、言ってたな…とか。

今更になって
そんなことを思い出す。



”っていうか…これ住所
ここからじゃ、めっちゃ遠いじゃん(笑)”


”………………まじ?”

”申し訳ございません…
本日、当館は全て満室になっておりまして…”


”……………ぇ、”

”あぁ大丈夫です、大丈夫です(笑)
自分達で適当に探しますんで(笑)
もう本当にご迷惑おかけしました~。”




すみませんねぇ、と
受付の人に笑顔で何度も謝る和に。

ショックで固まったまま動けずにいるのを
ずるずる引きずられながら、旅館を後にして。



スマホで周囲を検索しながら
とりあえず近隣のホテルや旅館に
当たってみるものの。

どこまで
ついていないのか。

更にちょうど、その日に限って
超有名アイドルグループのライブのせいで
全ての宿泊施設が満室という事態。



いよいよ行く先が無くなって
今夜、どうしようか…と途方に暮れて。

冒頭の、謝罪とため息に戻る。



「まぁ、さ。
ネカフェもあるし、なんならカラオケでもいいし。
一晩くらい、正直どうにでもなるじゃん。」


「…………………でも、」

「………っていうかさ、」

「…………………」

「せっかく来てるんだから…
楽しまないと、もったいなくない?」


「…………………ん、」

「それに…俺はさ。
どこで寝るかより…誰といるかの方が大事だけど?」




智は違うの?
…って、言いたげに。

夜の街でもキラキラ輝く
琥珀色の澄んだ瞳。



「…………かずぅ、」

「……なによ、」

「…………すき。」

「………………///」

「和みたいな子が俺のもんとか…
なんか…まじ、もったいねーよなぁ…」


「…………あなたがそれ言う?///」



そんなの
こっちのセリフだからね…って。

真っ赤な耳を、髪の隙間から
ちらちら覗かせる和が。

恥ずかしそうに
俯いて。



隣りに並ぶ
俺の手に。

甘えるように
指を絡める。



わんこみてーに
かわいくて。

どこまでも
人に優しくて。

機転が利いて
甘えん坊で。

そのくせちょっぴり
あまのじゃくな所もあって。



和と結ばれた
あの時から。

愛しくてたまんない
俺の宝物。



「せっかく…和といちゃいちゃすんの。
楽しみにしてたんに………」


「………そんなの///
帰ってからでもできるし///」


「ちげーじゃん。」

「……………///」

「旅先だったら…さ。
もっとちゃんと…いつもより甘やかせられんじゃん。」


「……………///」

「素直になってる和…
ちゃんと、可愛がりてーし。」




非日常的な
雰囲気になるせいか。

旅先になると
普段より甘えがちになる和。



一日、ずっと
一緒にいられるのとか。

きっと…
そういうのも色々手伝って。

いつもより更に
スキンシップが多くなって。

さとし…って
かわいい声で俺に甘えて。



最近、仕事で
一緒にいられる時間が少なくて。

きっと…
寂しい思いさせてる分。

今日の旅行は…
ちょっとでもたくさん。

和のこと。
甘やかせられたら…って、思ってた。



「……………ね///」

「…………ん?」

「…………じゃ、さ///」

「………………んぁ?」

「あそこ……行く?///」



こつん、と
肩を俺にぶつけて。

内緒話をするように。
小さく指差したその先に。

そこには、色鮮やかなデザインが
壁に大きく描かれた。

普通のホテルとは少し違う
大人向けの、ホテルの看板が目に入る。



「甘えてもいいんなら……」

「…………………」

「めいっぱい、甘えてい?///」



絡めていた指を
きゅ、っと絡め直して。

ぎゅ、っと
腕がくっつく程。

身体を摺り寄せた和の体温に
自分の体温も上がる。



「………明日の観光、できっかな。」

「それは…智次第でしょ。」

「………可愛がって、い?」

「…ちゃんとしっかり…甘やかしてよ///」



小さな声で囁いた俺に。

そ…っと口元を
耳に寄せて。

淡い吐息交じりに吐き出した
和の精一杯のおねだりに。

二人並んで
ホテルへと歩きだした。