大宮妄想小説、BLです。

ご理解のある方のみ、どうぞ。

苦手な方、不快に感じる方はご遠慮下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和也side



”もっと違う設定で もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった”





テレビから
聞こえてきた。

久しぶりに聞く
智の歌後。



半年経っても尚

心震えるその歌声は。
 

それまでは聴いたことのない

初めて耳にするメロディーを、紡いでいた。





”もっと違う性格で もっと違う価値観で
愛を伝えられたらいいな ”





テレビから流れてくる

初めての歌詞、初めてのメロディーに。



新曲、なんだ…って。



一ミリも動けず

リモコンを手に固まったまま。

頭の片隅で

ぼんやりと考える。





”君の運命のヒトは僕じゃない
辛いけど否めない でも離れ難いのさ”





運命のヒト。



初めて想いが重なった

あの日の夜。



確かに抱いていた

智への想いが。

 

昨日のことのように…

色鮮やかに思い出されて。



胸がぎゅっと

締め付けられて。

 

息苦しさに。

思わず胸を押さえる。





”その髪に触れただけで 痛いや
いやでも 甘いな いやいや”





そういえば…
最後に愛し合った、あの時。

何度も
乱れた髪を撫でては。

くしゃ…っと。
しんどそうに、顔を歪ませてた。



…なんて。



流れてくる歌声に。

今でも鮮明に覚えてる
彼の、小さな表情の変化を思い出す。





”それじゃ僕にとって君は何?
答えは分からない 分かりたくもないのさ”





智の

柔らかな歌声が。

 

優しいメロディーの中で

悲し気に響いていて。

 

 

 

まるで。

 

智が泣いてるような
そんな感覚に、一人陥る。






俺にとって。


貴方は運命の人だって

思ってた。



ずっと…
ずっと側にいる。

唯一無二の。
かけがえのない人だ…って。






”たったひとつ
確かなことがあるとするのならば

『君は綺麗だ』”





………ねぇ。



あの時。
貴方。

何度も、”綺麗”…って。



俺のこと見て。

そう。
言ってくれたよね。



貴方。いま。

 

これ歌いながら

何を想ってる?

 





”もっと違う設定で もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった”





もっと、違う設定…って。

もっと、違う関係…って。

一体。
どんな関係なんだろう。





ふと、思う。



……もし、俺が。

ただ…
守られるだけの立場なんかじゃなくて。



俺も…貴方のこと
守れるような立場だったら。

もう少し…
なにか、違ってたのかな。





”いたって純な心で 叶った恋を抱きしめて
『好きだ』とか 無責任に言えたらいいな
そう願っても 虚しいのさ”





……”好き”って。





あの時、一度だって

言ってくれなかったけど。



でも…

 

 

 

貴方も。
俺に言いたかったのかな。





”繋いだ手の向こうに エンドライン
引き伸ばすたびに 疼きだす未来には
君はいない その事実に Cry...
そりゃ苦しいよな”





貴方も…

俺と、同じように
泣いたのかな。



二人で
いられない未来に。

苦しい、なんて。
思ってくれた…のかな。





”それもこれも
ロマンスの定めなら 悪くないよな”





…………運命、って。
なんなんだろ。



天の命によって
決められてるもの?

人間の力じゃ
変えられないもの?



天の下に決められたものなら
しょうがないよね…って。

諦めないといけないの?






………もし。






違う設定で。
違う関係で。

出会えばよかったんなら。



俺が。
その世界線選んだら。

貴方との

運命の定め。

 

変えられたりするのかな。






”とても綺麗だ”






静かにマイクを降ろす
前より細くなった智の横顔。



あの時

灰色にくすんでた瞳は。

 

どこか今も

くすんでるような気がして。




あの時の

ベッドでの。


泣きそうだった智のこと

思い出す。






綺麗…って。

泣きそうな顔して言ってくれた
貴方の言葉。



好き…って。

 

何度も、何度も

言ってくれてた貴方。






…もう一度。

もう一度だけ。
貴方と、二人一緒の未来。

思い描いてみちゃ

だめかな。






もし。

 

貴方との運命を

変えられるんなら。



俺が

その違う世界線。

 

選んで

会いに行ったら。

 

貴方、また。

俺のこと…選んでくれるかな。

 

 






「…………さとし、」





暗闇の中に消えていった

智の姿に。


見えない、その

今でも大好きな姿に。
 

 

 

半年振りに。

 

そ、っと手を伸ばして

画面越しに、指先で触れる。








………ね、智。





もし。俺達が
こうならなきゃいけなかったのが。

運命…のせい
だったんだとしたら。



俺が…その。

ロマンスの定め

なんてもの。
 

変えてみても、いいかな。






パチパチと聞こえる

観客の人達の拍手。



涙で滲んでよく見えない

テレビ画面を見つめながら。
 

テレビの中に消えていった

智を想いながら。

 

一人呟いた。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★明日、最終話です。