大宮妄想小説、BLです。

ご理解のある方のみ、どうぞ。

苦手な方、不快に感じる方はご遠慮下さい。

 

 

☆今日から、過去のお話に入ります。

 時間軸は、かなり昔に設定していますが

 口調は”現在”と変えていません。(よく分からないので笑)

 全て架空の設定であること、ご理解下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
サトシside
 
 
 
今から、何百年も前の時代。
 
土地、金、権力、名声…。
 
そんなもののために
絶えず争っていたニンゲン達に。
突然の襲撃を受け…荒らされたとある村で。
俺と和は…出会った。
 
 
 
ニンゲンの血や、生気で生きている
俺達ヴァンパイアの世界でも。
 
”己の欲のために、殺してはならない”
という掟くらいは、ある。
 
だから、食事をする時は
ニンゲンに催眠をかけ、適度に血をもらうか。
ニンゲンを惑わすことを得意とする者は
交わることで…生気を吸い取るか。
 
この…いずれかの方法だったから。
 
この頃の時代は…腹が空いたな、と思ったら
戦場にいけば、いつでも食事にありつける
食事に困らない楽な毎日だった。
 
 
 
暗闇が支配する夜の中。
 
その夜も、俺はいつものように
荒れ果てた土地に転がる…ニンゲンで。
空いた腹を、満たしていた。
 
 
 
ニンゲンなんて、全く興味なかった。
 
生きてようが、死んでようが。
美味い血を飲めれば、どうでもよかったし。
 
情けとか、憐れみとか…そんなもの。
俺達モンスターには、無縁の感情だったから。
 
ニンゲンなんて…ただの食い物にしか
見えてなかったのに。
 
 
 
「…ヒッ…クッ…お…俺をあげるから…」
 
「……………」
 
「ウッ…か…母さんには…手を…出さないで…」
 
 
 
”母さん”…と、泣きながら
地面に横たわるニンゲンにしがみつき。
 
荒れ果てた土地で
1人座り込んでいたそいつが。
 
後ろに立っていた…俺の気配に気付き
口元についていた鮮やかな赤を
舌でペロっと、俺が舐めとったのを見た瞬間。
 
もう…死んでいるはずのニンゲンを
自分の身を挺してまで、守ろうとする姿が。
 
その時の俺には…不思議でしょうがなかった。
 
 
 
「…ヒッ…クッ…ウッ…お願い……」
 
「…………」
 
 
 
涙で濡れ…水晶のように光る
汚れのない琥珀色の瞳と、目が合った瞬間。
 
俺の中の何かが…
初めて、グラ…っと揺れ動いて。
 
 
 
「……なんで、そんなに泣いてんだ?
 
 
 
その…涙の理由を知りたい、と。
初めて思った。
 
  
 
「…母さん…母さんが…」
 
「……………」
 
「……ヒッ…クッ…グス……」
 
 「……どこに運ぶ?」
 
「……え……」
 
「ニンゲンって“ハカ”に葬るんだろ?
それくらい…俺だって知ってんぞ。」
 
「…………」
 
「……ほら、俺が運んでやっから。」 
 
「……いいっ……俺が……自分で……」
 
 
 
簡単に折れそうな、華奢な身体つきのクセに。
 
少しよろめきながらも
大事そうに運ぶ…その背中を見てると。
なぜか、どうしても放っておけず。
 
後ろから、そっとついていって。
涙を流しながら…1人黙々と進めるソイツを
ただジ…っと、見守っていた。
 
 
 
なんで、こんなに。
たった一人のために、泣くんだろう。
 
なんで、ニンゲンは。
こんなに誰かのことを、大事にすんだろう。
 
 
 
出来上がった“ハカ”の前で
枯れない涙を流し続けるのを見ながら。
 
初めて、“ココロ”を考えた。
 
 
 
 
 
やがて…空が白み始め。
夜明けが近づいていることを、知らせる。
 
………そろそろ、俺も帰んねぇと。
 
 
 
「……なぁ。お前、帰る家あんの?」
 
「………そんなの………」
 
「………………」
 
「……家も、村も。
全部……無くなっちゃった。」
 
「……ほら。俺に負ぶされ。」
 
「………え?」
 
「……行くとこ、ねぇんだろ。
別に……今更、食ったりしねぇから。」
 
「……………」
 
「早くしろよ…夜が明けんだろ。」
 
 
 
 
 
なんで…俺はこの時。
こんなことを言ったのか。
 
未だに全然…分からないけど。
 
でも…きっと。
和の瞳から垣間見えた…綺麗な”ココロ”に。
俺はもう…惹かれていたのかもしれない。
 
 
 
 
夜明けが迫りくる世界を
少し急ぎ気味に、館へと駆け抜ける中で。
 
初めて…背中越しに
ニンゲンの体温を、感じて。
 
ニンゲンって温かいんだな…と
この時、初めて知った。