和也side
 
 
 
「―――ん。」
 
「……ニノ?」
 
真っ先に視界に入った…白い壁の天井から。
ゆっくりと…声のする方に顔を向ける。
 
「……俺…ライブ……」
 
「…大丈夫。今日は全部終わったから。
3人も今、着替えて…身支度とかしてる。」
 
「……そっか……」
 
「身体は…?どう…?」
 
「……ん。だいぶ楽になってる。」
 
ライブ中からずっと感じていた激痛が
今はだいぶ落ち着いて…マシになっていて。
少し鈍痛がするくらいだった。
 
「良かった…。
一応、痛み止めの注射してるらしいから。
明日、朝イチで絶対に病院な。」
 
ぼんやりと…智の話を聞きながら。
ふ…っと、右手にある温もりに気付く。
 
チラ…っと目をやると。
智の手で…ギュッと握られていて。
 
ほんの少しだけ…しっとりした感触に。
どれだけ長い間…こうして手を握って
側にいてくれていたのかを…教えられた。
 
 
 
「……ごめん……。」
 
俺の言葉を聞いた途端
智の眉間に、小さなシワができる。
 
「…疲れてんのに…付き合わせちゃって。」
 
「……言ってんだよ…。」
 
智が…怒ったように強く、俺の手を握り
口元に引き寄せて…指先にキスをする。
 
「…こんなに無理して
身体に鞭打ってまで…頑張ってんだから。
今は…自分の心配しろよ。」
 
そう言って…俺を見つめる智の瞳は。
自分も痛みを感じているみたいに、揺れている。
 
「…なんで貴方が、痛そうな顔してんのよ。」
 
「…だって……ニノの身体が
こんだけ…悲鳴上げてたんだよ…?」
 
大きくて綺麗な手が
労わるように、俺の腰を撫でる。
 
「ニノが辛かったら…俺だって辛いし…」
 
 
 
そんなに…貴方まで辛そうにしないでよ。
 
俺だって…自分のことよりずっと。
貴方の辛そうな顔を見てる方が…キツイのよ。
 
 
 
「…こんなの別に…大したことないから。
 
…ちゃんと…ライブ終えられたし。
それだけで…もういいじゃない。ね?」
 
「…良くねぇよ。」
 
 
 
貴方のそんな顔、見ていたくなくて
話を、早々に切り上げようとしたのに。
却って…逆効果だったらしい。
 
久しぶりに…怒った口調の智の声を聞いた。
 
 
 
「ニノも…ちゃんと笑えてねぇと…
意味…ねぇんだよ…。」
 
「……ん……」
 
「…あんまり…無理すんなよ…。
…こんなんなるまで…耐えんなよ…。」
 
 
 
こぶしをギュ…っと握る手が。
まるで…”悔しい”って言ってるように聞こえる。
 
 
 
「……もう少しさ。
自分の身体も…大事にしろよ。
なんで…こんなになるまで頑張んだよ…。」
 
「…そりゃ…頑張るよ…俺だって。」
 
 
 
そんなに怒んないでよ…って気持ちを込めて。
智の、強く握りしめた手を、優しく包むように
上からそ…っと、手を重ねる。
 
 
 
「…だって。俺達に…
時間をくれるお客さんを…楽しませるのが
俺達の仕事でしょ?」
 
 
 
”今、目の前にあることを 頑張る”
 
それだけは…絶対自分の考えを譲らなかった
いつかの…あの時の貴方みたいに。
俺だって……譲りたくない。
 
 
 
「目の前にある仕事を…
精一杯頑張れる人でいなきゃ…さ。」
 
 
そうじゃなきゃ…
真っすぐで熱い、貴方の隣りに並んで。
胸を張って…堂々と立てないから。
 
貴方の言葉から生まれた、俺の信念は。
何があっても絶対…譲らない。
 
 
 
「…でもさ、ニノ。
仕事の前に…何よりもまず。
 
ニノの身体が、1番でしょ。」
 
 
 
そう言って…腰を撫でてくれる手が。
 
真っすぐで熱い、貴方の中にいつもある
優しさを…伝えてくれて。
 
 
 
「お願いだから…。
ニノのためにも…俺のためにも…。
絶対…あんまり無理すんなよ…。」
 
 
 
1つ1つ…紡いでくれる言葉が。
 
いつまでも変わらない
貴方の温もりを、感じさせてくれる。
 
 
 
「……。」
 
「……返事は?」
 
「……ん。」
 
「……よし。」
 
 
 
「約束な。」って言いながら
半ば強引に小指を絡めて指切りげんまんをする
綺麗な指が、ちょっとだけ気恥ずかしくて。
 
「俺、今一体何歳だと思ってんのよ。」って
ちょっとだけ…憎まれ口を叩いていたら。
 
 
 
ガラガラッ
「ニノー!あ、目ぇ覚めた!?
よかったー!」
 
「相葉さん、音!もっと静かに開けろって!」
 
コレ…歩くのキツイかなって思って
車椅子借りてきたんだけど…」
 
 
 
智に負けないくらい…過保護で。
 
優しくて、熱くて、真っすぐな人達が現れて。
 
部屋の中が一気に賑やかになる。
 
 
 
「車椅子って…ちょっと大袈裟じゃない?(笑)
 
「いーの!
だってニノ、すーぐ無理すんだもん!」
 
「痛くないからって油断して
また悪化したらイヤでしょ?」
 
「いーぞ松潤。もっと言えー。」
 
「ほらほら、いーから。
さっさと乗ってホテル行こ。」
 
 
 
でも…さ。
 
いつ、どんな時だって。
こうして…温かさでいつも包み込んで…
支えてくれる人達がいるから。
 
だから俺は…。
俺の信念を、貫いていけるのよね。
 
 
 
「……ほんっと。
あなた達って”バカ”がつくくらい優しすぎ。」
 
 
 
いつも…いつまでも変わらない4人に。
 
その日の夜はいつもより…ちょっとだけ。
素直に甘えて、過ごしてみた。
 
 
 
 
 
 
 

 

*-*- Fin -*-*

 

 
 
 
 
 


ちょっと短いお話でしたが…
最後までお付き合い下さり、ありがとうございました!
 
こちらのお話を書く前に
久しぶりに、「15年目の約束」を観ました。
 
やっぱり…奇跡の5人だなって
そっちにも感動しちゃって…°(´ฅωฅ`)°。
 
大好きな大宮の空気…そして5人の空気を
少しでも感じて頂けていたら…嬉しいです///
 
5人がこれからも
何より健康一番で、頑張れますように。
 
からの願いを込めて…。
 
それでは、また明日ー飛び出すハート