【転載】屋久島沖で領海侵入繰り返す中国測量艦 海軍の狙いは

内橋寿明 

毎日新聞 2023/6/5 05:00(最終更新 6/5 09:18) 1571文字

 

鹿児島県・屋久島沖の領海に入った中国海軍の測量艦=2023年2月(防衛省統合幕僚監部提供)拡大
鹿児島県・屋久島沖の領海に入った中国海軍の測量艦=2023年2月(防衛省統合幕僚監部提供)

 縄文杉で知られる人気の観光スポット、鹿児島県・屋久島の沖合で、中国海軍の艦艇による領海侵入が相次いでいる。侵入した中国艦艇の大半は、海中調査の能力を備えた測量艦だった。沖縄県・尖閣諸島周辺では、中国海警局所属の公船が領海侵入を繰り返しているが、屋久島沖の海軍艦艇は目的が異なるようだ。中国側の狙いを探った。

 

 「ここは日本の領海です」。2月12日未明、領海に入った中国海軍の測量艦1隻に対し、追跡する海上自衛隊の艦艇がスピーカーから中国語でそう呼びかけた。測量艦は午前0時50分ごろ屋久島南の接続水域を北に進み、同2時半ごろに屋久島南西の領海に入った。上空からは海自の哨戒機2機が警戒を続けた。 防衛省(東京都新宿区)にある自衛隊の「中央指揮所」では、当直の隊員が測量艦の航跡を表示したモニターに目を光らせていた。海自の艦艇を指揮する自衛艦隊司令部(神奈川県横須賀市)でも監視するなか、測量艦は領海内を北西へ航行し、同4時10分ごろに口之島北東の領海から出て東シナ海へ抜けた。

鹿児島県・屋久島沖の領海に入った中国艦艇の動き(2月12日)拡大
鹿児島県・屋久島沖の領海に入った中国艦艇の動き(2月12日)

 防衛省によると、中国海軍の艦艇による領海侵入は2004年11月に初めて公表され、23年2月のケースを含めて過去10回ある。うち7回は21年11月以降に集中しており、いずれも測量艦が屋久島・口之島間を航行した。

 ではなぜ、数ある航行ルートのうち屋久島・口之島間にこだわるのだろうか。海自横須賀地方総監を務めた元海将の渡辺剛次郎氏は「屋久島沖は黒潮の経路上にあたるため、潜水艦が探知されにくい条件がそろっている」と指摘する。潜水艦の位置を知るにはスクリュー音などを手がかりとするが、屋久島沖は黒潮が通過することで潮流が強く、海水温の分布が一定とならず、温度の変化が起きやすい。海中で音が伝わる時には海水温の影響を受けるため、屋久島沖では音の伝わり方が複雑になるという。

 沿岸国の主権が及ぶ領海は沿岸約22キロ内、接続水域は領海の外側約22キロ内を指す。国連海洋法条約は、軍艦であっても敵対的行動を取らなければ「無害通航」として他国の領海を航行することを認めているが、測量活動は「無害通航」とみなされない。ただ、測量艦が屋久島沖を航行したのは大半が夜間で、「暗くて活動内容をはっきり確認できない」(防衛省関係者)という。

 政府関係者によると、屋久島沖では22年秋、中国の民間測量船の航行も確認された。民間船であっても収集したデータが中国海軍に渡る可能性があるとみて、防衛省は警戒を強めている。同省幹部の一人は「季節ごとの水温変化や潮流のデータを集めるため、領海侵入は今後も続くのではないか」と語る。【内橋寿明】

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私見:私にはこの記事がそのまま事実はどうか、それだけの情報は持っていない。だから私はいくつかの異なる見解にふれ、多面的な論評を知り、そこで自らの視点を形成していきたい。できるだけ事実かどうかに慎重に吟味し、それが事実だと確信できた場合だけ事実を公開するようにしたい。いまはとりあえずそこまででとどめる。