Uさん4


Uさんは、私が勤務していたグループホームで初めて最期の時を迎えてくださった方です。まだ、外部評価がモデル事業だった頃、東京センターからN先生が来られ、外部評価項目についてのヒアリングをされたのを覚えています。その席にご家族を代表されUさんの娘さんが参加されていました。そこで娘さんが『父は病院や施設を転々として来ました。ちょっと身体の状態に変化がある度に入院したり施設を移動したり、、、。ようやく今、父は穏やかに過ごしております。このまま最期まで見ていただける様にはならないでしょうか?それをグループホームに望みます。』      涙ながらに訴えて下さいました。まだまだ、国の指針として、グループホームは終の住みかで有る様に、等とはなっていなかった頃の事です。   この思いはUさんご家族、そしてUさん自身も揺らぐ事はありませんでした。


私達スタッフはUさんとまずまず長い時をご一緒させて頂きました。少しずつ身体が弱り中々ご自分で歩く事が難しくなってしまいましたが、車イスに乗りご家族と、そしてスタッフと近くの競馬場へ大好きな競馬を観に行ったりしました。入居されて直ぐの頃には良くご一緒にUさんの居室にて競馬観戦をし、Uさんの馬の見方を参考にしたものです。『この馬の脚は本物だ』そんな事があったな〜と競馬場で思い出したのを覚えています。   ご入居当初は入浴をお勧めしても『戦争の頃は2ヶ月も入らない事があった❗️でも大丈夫だった』と中々入浴頂けなかったのですが、(認知症になられると入浴を拒まれる方が多くいらっしゃいます。無防備である裸になる事への恐怖や、一つ一つ次行なうべき手順が結構複雑だったりする為です。スタッフは何とか入浴頂こうとと、あれやこれやとお声掛けさせて頂くのですが、、、)この頃になると入浴が楽しみの一つとなり、身体が細くなってしまったUさんは浴槽でプカプカと身体が浮いてしまっていました。それがとても気持ち良かった様です。起床ケアの後も必ずホールへ出るのでは無く、しっかりUさんの意思を確認しました。『Uさん、ホールへ出ますか❓』の問いにUさんは、スタッフの目を見つめたり、時にはフッと目を逸らしたり、そんな事で必ずUさんの意思を確認するのです。Uさんの意思を読み取った!との確証は無いのですが、Uさんの思いを感じる確心(造語ですかね?確信とはまたちょっと違った感覚なんです)は有りました。この様なコミュニケーションを丁寧にUさんと交わさせて頂きました。認知症が深く深くなってしまっても、多くの同じ時を共にさせて頂いた方の想いや意思は感じる事が出来ていたと確心しています。  そして、Uさんの最期の時が訪れました。