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素晴らしい作品はフランス政府に留め置かれてしまったんですねぇ ポール・ゴーギャン作『扇のある静物』(オルセー美術館蔵)


皆様、お早うございます。9月23日迄国立西洋美術館にて開催中の夢の大展覧会「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」に行って参りました。その感想です。

神戸の川崎造船所(現・川崎重工業株式会社)を率いた松方幸次郎(1866(慶応元年12月1日)-1950)は、第一次世界大戦による船舶需要を背景に事業を拡大しつつ、1916-1927年頃のロンドンやパリで大量の美術品を買い集めます。当時の松方のコレクションは、モネやゴーガン、ゴッホからロダンの彫刻、近代イギリス絵画、中世の板絵、タペストリーまで多様な時代・地域・ジャンルからなり、日本のために買い戻した浮世絵約8000点も加えれば1万点に及ぶ規模でした。
しかし1927年、昭和金融恐慌のあおりで造船所は経営破綻に陥り、コレクションは流転の運命をたどります。日本に到着していた作品群は売り立てられ、ヨーロッパに残されていた作品も一部はロンドンの倉庫火災で焼失、さらに他の一部は第二次世界大戦末期のパリでフランス政府に接収されました。戦後、フランスから日本へ寄贈返還された375点とともに、1959年、国立西洋美術館が誕生したとき、ようやく松方コレクションは安住の地を見出したのです。
開館60周年を記念した本展では、名高いゴッホ《アルルの寝室》や、2016年に発見されたモネの《睡蓮、柳の反映》など国内外に散逸した名品も含めた作品約160点や歴史資料とともに、時代の荒波に翻弄され続けた松方コレクションの百年に及ぶ航海の軌跡をたどります。

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フィンセント・ファン・ゴッホ作『アルルの寝室』(オルセー美術館蔵)

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オーギュスト・ルノワール作『アルジェリア風のパリの女たち』(国立西洋美術館蔵)

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エドワール・マネ作『自画像』(ブリジストン美術館蔵)

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エドガー・ドガ作『マネとマネ夫人』(北九州私立美術館蔵)

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クロード・モネ作『睡蓮』(国立西洋美術館蔵)

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クロード・モネ作『積みわら』(大原美術館蔵)

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エドワルド・ムンク作『雪の中の労働者たち』(個人蔵 国立西洋美術館に寄託)

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ジョン・エヴァレット・ミレイ作『あひるの子』(国立西洋美術館蔵)

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ダンテ・ガブリエル・ロセッティ作『愛の杯』(国立西洋美術館蔵)

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シャイム・スーティン作『ページ・ボーイ』(パリ国立近代美術館 ポンビトーセンター蔵)

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フランク・ブラングイン作『松方幸次郎の肖像』(国立西洋美術館蔵)





丁度10年前、国立西洋美術館50周年記念の時は、松方幸次郎と共にコレクションの生成に大きく関与した「フランク・ブラングイン展」がとても素晴らしく、観た当時は生涯のベスト1にしていたのですが、2012年に江戸東京博物館にて開催された驚愕の美術展で大河浪漫をしてしまった「維新の洋画家 川村清雄」展に首位を奪われてしまったのですが、生涯のベスト10入りは確実でして、その流れを汲む本展覧会も国内外に流出してしまったり、フランス政府に留め置かれてしまった作品の里帰りもあって国立西洋美術館60周年を飾るに相応しい大展覧会と言い切ってしまいましょう。
今回観ていて驚いたのは国立西洋美術館のコレクションの中でも初めて見る作品が多くて「こんなコレクションがあったんだ!」と驚いたり、はたまたフランス政府に留め置かれてしまったゴッホの『アルルの寝室』(オルセー美術館蔵)やゴーギャンの傑作『扇のある静物』(オルセー美術館蔵)また描かれた時代が後になるためパリ国立近代美術館(ポンビトーセンター)に収蔵されたシャイム・スーティンの『ペーパー・ボーイ』等傑作揃い。更に日本国内で売り立てが行われて普段は御目に掛かる機会が無い三井住友銀行蔵の作品や日本生命保険相互会社の所蔵作品等もあって眼福眼福。更に国立西洋美術館だけではなく、第二会場として東京国立博物館本館第10室では松方幸次郎が東京国立博物館に寄贈した中でも、今回と次回は、1988年4月に松方幸次郎の卒業100周年を記念して母校アメリカ・ニュージャージー州ラトガーズ大学の付属美術館で開催された「松方コレクション浮世絵版画展」に出品された100点の作品の中から優品を選んで浮世絵版画発展の歴史を追って展示すると言う連動企画。此方は写真撮影可能なのが嬉しい。

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勝川春草作『東扇・初代中村仲蔵 』(東京国立博物館蔵)

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鳥高斎栄昌作『郭中美人競・扇屋内花扇 』(東京国立博物館蔵)



そうした訳で国立西洋美術館のみならず、東京国立博物館本館第10室にも足を運んで頂きたい好企画でありました。