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元田久治作『Indication Shibuya Center Town』


皆様、おはようございます。渋谷区立松濤美術館にて1月31日迄開催中の「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」展に行って参りました。その感想です。

栄華や文明の痕跡を残しながら崩れ落ちようとする建造物や遺跡。「廃墟」は西洋美術のなかで、風景画の一角にくりかえし描かれていました。18世紀から19世紀にかけて、興味深いことにいわゆる廃墟趣味が流行すると、「廃墟」は絵画の主役の地位を確立していきます。
 「廃墟」を愛でること、描くこと-この美学は、近代に日本の美術のなかにも伝播しました。廃墟の画家として名を馳せた18世紀のユベール・ロベール、版画家ピラネージから、19世紀のコンスタブル、20世紀のアンリ・ルソー、マグリット、デルヴォー、そして日本の江戸時代から近現代の画家たち、亜欧堂田善、藤島武二、岡鹿之助、元田久治、大岩オスカール、野又穫まで、廃墟の主題は描き継がれているのです。
なぜ人々は、流れる時間のなかで滅びた、またはいつか滅びてしまう、遠い昔のあるいは遠い未来の光景に、惹きつけられるのでしょう。
この展覧会では、西洋古典から現代日本までの廃墟・遺跡・都市をテーマとした作品を集め、これら「廃墟の美術史」をたどります。

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シャルル・コルネリス・ド・ホーホ 作『廃墟の風景と人物』(東京富士美術館蔵)

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ユベール・ロベール作『ローマのパンテオンのある建築的奇想画』(ヤマザキマザック美術館蔵)

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アシル=エトナ・ミシャロン作『廃墟となった墓を見つめる羊飼い』(静岡県立美術館蔵)



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ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ作『古代アッピア街道とアルデアティーナ街道の交差点』町田市立国際版画美術館蔵)

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アンリ・ルソー作『廃墟のある風景』(ポーラ美術館蔵)


1月14日に観に行って参りました。当初は「ロマンティック・ロシア」のみを観る予定で渋谷に向かったのですが、途中でこの展覧会がやっていると気が付き、最初にこれを観てから「ロマンティック・ロシア」に向かいました。
入って愕然としたのが通常であればこの美術館地下一階が第一展示室の筈なのですが、今回は二階に第一展示室があったことなんです。何でこんな変則的な構成にしたのかは第二展示室を観て納得行ったのですが、ともあれ地下一階に下りたら第二展示室だったのでたまげた次第。
「こんなに凄い展示で一体どうしよう?」が展示を観ての率直な感想。それほどまでに凄まじい展覧会だったのであります。


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亜欧堂田善作『独逸国廓門図』(東京国立博物館蔵)

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歌川豊春作『浮繪アルマニヤ珎藥物集之圖』(東京国立博物館蔵)

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不染鉄作『廃船』(京都国立近代美術館蔵)


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藤島武二作『ポンペイの廃墟』(茨木県近代美術館蔵)


17世紀のド・ホーホの絵画から壁一面に飾られた国立西洋美術館、町田市立国際版画美術館、郡山市立美術館、静岡県立美術館から借り出された膨大な数の版画の数々。ただ只管に圧倒されました。更に奥のコーナーに行くと「廃墟に出会った日本の画家たち」と題して亜欧堂田善の『独逸国廓門図』や東京ステーション・ギャラリーで出逢った不染鉄の『廃船』もがあるではありませんか!

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ポール・デルヴォー作『海は近い』(姫路市立美術館蔵)

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榑松正利作『夢』(練馬区立美術館蔵)

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大岩オスカール作『動物園』(東京都現代美術館寄託)

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野又 穫作『交差点で待つ間に-Listen to the Tales-』


地下一階にある第二会場に行くと「シュルレアリスムのなかの廃墟」と題したコーナーで日本随一のデルヴォーコレクションを誇る姫路市立美術館からデルヴォーの渦、横浜美術館からはルネ・マルグリットの『青春の泉』が出ているし第五使用では昭和期の日本における廃墟的世界と題して槫松正利の『夢』を初めとして7作品。そして現代作家である大岩オスカールさま、元田久治さま、野又穫さまの大作が並んでこの為に天井が高い地下一階のスペースを第二展示室に使ったのねと納得してしまったのであります。国内にある作品だけでこれだけの展示が出来るとは良い所に目を付けた学芸員の方に感謝でございます。堪能致しました!