塾講師1年目の皆さん、こんばんは。
いつもありがとうございます。

塾講師として働き始めたのは、25年前。
四半世紀というと長いことやっているようにも思うのですが
上には上がいて、まだまだ現役の大先輩の諸先生方も少なくないので
まだまだヒヨッコなのですが…。

とはいえ、25年もやっていると
いろいろと仕事がらみの“実り”のようなものができてくるのです。
例えば指導法がいくつか確立されてきたり(だが完成はしないが…)、
保護者対応が良くも悪くも慣れてきて自然に(エラそうに?)なったり、
教え子たちが大きく成長して立派な人間になったりするのです。

25年前の中3生たちはもう40歳で、小6だった生徒も35を過ぎていて
当時まだ小3だった生徒も34歳なのです。

先日、20年近く前に教えていた生徒から連絡があり
同じ教育関係の仕事をしているということで久しぶりに会って話を
しようということにりました。

その生徒であったのは、まだその子が小4だった頃で、
私は個別指導の担当講師として、苦手な算数と国語を担当していました。
担当講師とはいっても、まだ社会人なりたて、指導経験は某有名個別指導
チェーン塾のアルバイト講師としての経験くらいの駆け出し講師でした。

塾のオリジナルテキストに沿ったカリキュラムではなく、
生徒の保護者がどこかから買ってきた難解な算数と国語のテキストを使い、
(後になってそれは“錬成テキスト”と“コア”だとわかったのだが)
毎回その子の学校のテスト範囲を先取りする形で教えるという、
新人講師にはやや手間のかかるものだったのでよく覚えていました。

人見知りする子で、初めはなかなか心を開いてもらえず、反応も薄くて
教えた内容もどこまでわかっているのか判らず、悩んだこともありました。
授業のときはほとんどリアクションもなく、ただ指示したことは黙々と
やって、授業時間が終わればサッと帰っていく感じでしたが、
保護者との面接の際に「塾の先生のお話を家で嬉しそうに話すんです」と
お母様から伺ったときに、喉のつかえがとれたような気持ちになり

それからは、算数や国語を教えるだけでなく、毎回の授業で一回はその子を
笑わせることを自らのノルマと課して、たくさん話をしました。
一方的に話すだけでなく、算数の問いに関連付けて質問攻めにしたり、
国語の読解分の感想を言い合ったりするうちに、徐々にその子の方から
学校での出来事やお友達のことなど様々な話をしてくれるようになりました。

3年ほど担当し、その子が小6を終わるころに私が勤務教室を異動することに
なり、後任の講師に引継ぎをして別れました。
しかし、半年ほどして親子で私の異動先教室を見つけ出し、なんとか車で
送迎できる距離だったこともあり、再び担当するようになりました。

そこまでなついてくれることはもちろん嬉しかったですし、有難い気持ちで
一杯でしたが、また数年後には異動のタイミングがやってくるのは
わかっていたし、様々な先生に教わりいろいろな考え方があることを知るのも
大事なことだと考え、あえて別の講師を担当にあてたりして少しづつ距離を
とるようにしていました。

それでも結局は授業の合間などに話に来たり、送迎や保護者面接のときには
お母様といつも進路のことやしつけ、交友関係のことなどを話し合ったりして、
次の異動の後にも、ときどき校舎に電話してくるなどして、長く可愛がって
いただいたものでした。

その子が中学から高校へと進んだ頃からは連絡が減り、
私も責任者職になり忙しくなったりもして音信不通に。そしてしばらくして
風の便りにその子が退塾したことを聞き、それ以降ずっと気にはなっていたものの、
こちらから連絡するのも何か筋違いな気がして、結局数年が過ぎました。

そして、別の教え子が大学入学の報告を兼ねて挨拶をしたいと
わざわざ私のところまで訪ねてくれた際に、友達だからとその子とのつながりが
再びでき、コロナ禍が明けてからの再会となったのです。

前置きが長くなりましたが、言いたいことは二つです。

教え子たちは、こちらの想像を上回る成長をして、立派に生きています。
そして、こちらが思っている以上に、当時授業で教えたことや叱ったことや
雑談や冗談やらを、覚えてくれています。

塾講師は、何年たっても塾講師で。
毎年同じカリキュラム、同じテキスト、同じような授業をし、
毎年同じような受験を入試を戦って、毎年違う教え子たちの合格をアシストし、
白髪と健康診断の数値だけが増えていきますが、
教え子たちは、合格した志望校を立派に卒業し、各々が描いた道を力強く歩んでいます。

上手く言えませんが、自分が置いていかれているような感覚と、
その後ろ姿を頼もしく笑顔で見つめている自分がいるような感覚…。

講師1年目のアナタ、あるいは塾講師を生涯の仕事にしようか悩んでいるアナタ。

巷のニュースでは文字にするのも悍ましいほどの悲しい事件を起こす講師もいますが
大部分の塾講師の先生たちは、全身全霊で生徒の指導にあたり、進路相談に乗り、
自分の何かを犠牲にしてでもその生徒の将来にベストな選択肢を考え、寄り添い、
日夜頑張っています。そして、
そんな頑張りが、どういうわけか生徒やその保護者の方にはきちんと伝わっていて
きっといつかどこかで我々塾講師のことを思い出してくてれいるのです。

給料は決して良くない。
休みはとれない、あるいはとれても不定期、不十分。
昼夜逆転。コンビニ食中心。
運動不足。睡眠不足。
友を失い、親からは呆れられ、恋人には去られる。

それでも、塾講師として輝いている意味は、ある。
塾講師、いいもんです。

 

ICTも素晴らしいけど、人間対人間の真剣勝負だからこその、良さがある。
塾講師、いいもんです。

上手く表現できなくて、ここまで長い文章になりましたが、
そんな気にさせてくれた再会でした。

いろんなことが思い出され、つい酒が入りながら、これを書いています。
乱筆乱文、ご容赦ください。