日本テレビ系で今秋放映予定のドラマ『二月の勝者』のおかげか、

にわかに「塾講師」にスポットライトが当たる…のでしょうか。

私は高瀬志帆さんの原作漫画をすべて買って読んでいますが

おそらく塾関係者は少なからず内容は気になっているはずです。

 

作中に登場する学習塾名や私立中学校の名称などが

実在するものとは微妙に変更されていて、それでいて

わかる人には判ってしまうところがなんとも楽しい。

模試が返ってきたときの講師たちのやり取りや

保護者面談の前の準備、栄養ドリンク片手に徹夜なども、

思わず「そうそう、あるよね~」と何度もうなずいてしまう。

併願の組み方などはやや上位生寄りで一般的であるものの、

よく取材されているなぁとニンマリしてしまう。

 

10月も半ば。

そろそろ塾では2学期の面談が始まります。

夏前と違って、この2学期面談は大きく二つの意味を持つ

塾にとって、そして生徒・保護者にとっても

超重要な面談になります。

 

ここではあくまでも「塾講師」になりたての人に向けて

その2学期面談について簡単に説明しておきたい…。

 

2学期面談の目的。

まず一つ目は、

「受験生にとっては受験校決定のための面談」であるということ。

 

当然ながら、我々は塾ですから、塾生を志望校に合格させなければいけません。

中学入試も、高校入試も、残り時間はあと少し。

この10月、11月の模試の結果を見て、おおよその受験校は決めていきます。

 

どの学校を受験するか、

第一志望は? おさえ校(滑り止め)は?

どういう日程で併願を組むか、

過去問との相性はどうか、

無理なく通学できそうか、

校風やレベルは生徒に合っているか、

その先の大学進学実績はどうか、

部活動や経費面での不都合はないか、

本人やご家庭は納得できるか、

塾の実績としてどうか…などなど。

考えることは山ほどあります。

 

1学期の面談や、模試の志望校記入状況やアンケートなどで

これまでにヒアリングした候補となる学校をまとめながら

似た傾向の学校や、最悪のケースでもなんとか合格できそうな学校を

リストアップし、「合格」を掴むためにどう併願を組むかを考えます。

 

塾でお預かりしている以上、「全滅」だけは絶対に避けなければいけません。

その学校に入学するかどうかはさておき、とにかく「合格」させることが、

塾としては至上命題です。

 

日々の受験指導で生徒の学力を伸ばすのはもちろんですが、

「志望校」を適切なレベルに導き、生徒・保護者・塾の双方が納得するよう

進路指導もしっかりとやる必要があります。

わが子の実力を過信したご両親が「大学付属が希望なのでとりあえず第一志望に…」と

数打てば当たるだろうととんでもない学校名を入れてくることもあります。

逆に、安全策をとり低すぎる志望校ラインアップで固めてくるケースもあります。

 

とはいえ、生徒・保護者の話はよくよく聞いて、

その真意や本音のところをきちんと理解することは欠かさないことです。

受験するのは生徒。その子の人生に、その後も並走していくのは保護者です。

親子が納得できる学校をプロとして見つけてあげることこそが、

塾講師の仕事です。

 

2学期面談、

二つ目の目的は、

「次年度への契約継続確認」です。

 

これは受験生以外の学年の生徒との面談でのメインテーマ。

塾は学校と違い、営利企業です。

新年度になったときに、自動的に全員が進級するとは限りません。

塾はサービスを提供し、その対価として月謝などをいただきます。

生徒数、生徒単価、そしてなにより通塾期間の長さが、

経営していく上ではとても重要なものになります。

 

サービスに満足いただけない場合、当然ながら

「塾を変えようか」「もう塾やめようか」という相談が、生徒の家庭での

話題になることは容易に考えららえます。

そして、年度の変わり目こそ、最も「やめやすい」タイミングです。

 

はい。優秀な塾講師のあなたならもうわかりますね。

多くの塾では、年明けの2月から「新年度」がスタートします。

新規の顧客が動くのは冬休み辺りから。

冬期講習を体験して、1月にテスト結果などが少し良くなって、

その流れで2月新年度開講から入塾、というのがよくあるパターン。

 

今塾生として通っている生徒たちが、もし「別の塾」にするのであれば

12月までに塾をやめて、冬期講習から他の塾に体験にいきたいはず。

そろそろ退塾・退会するタイミングを見計らっているころです。

 

生徒が減ることは、塾にとっては死活問題です。

なんとしてもこれは避けなけばいけません。

つまり、2学期の面談では、生徒の成績が伸びていることや

学習姿勢が良くなってきていることなど、

塾に通っている意味・効果をアピールし、引き続き次年度もお通いいただく旨

確約をとることが重要なミッションとなります。

 

きちんと成果が出ていれば、楽しく盛り上がって笑顔で終了ですが、

成績が下がっていたり、たいして改善が見られない場合などは、

しっかりとした面談準備と工夫、理論武装が欠かせません。

 

日頃の保護者とのコミュニケーション頻度にもよりますが、

いきなり「やめます」と言ってくる親はそんなに多くありません。

塾を変える、というのは、それなりに「面倒」なものだし、「不安」はつきもの。

 

できれば今の塾を続けて、成績が伸びて欲しい…。

でも、この塾の先生たちは、ウチの子のことを真剣に見てくれているのか、

伸ばそうとしてくれているのか、続けていて意味があるのだろうか…。

とりあえず話を聞いてみてから考えようか。

 

そんな保護者の気持ちを考えれば、

面談で何を、どう伝えるべきか、

優秀な塾講師のあなたならわかりますよね?

できるだけ具体的に、未来が見えて、期待ができるような処方箋を

想いを込めて伝えなければいけません。お客様に安心していただくには…?

 

どの保護者も、

わが子を入塾させたときには、その塾に期待をし、信頼をしていたはずです。

その期待と信頼に応えられていればよいのですが、

もしそうでないのであれば、猛省しながら、実現可能な改善策と明るいゴールを。

あとは信じていただくしかありません。

狡猾な話術を駆使して落としどころを見つけるか、

腹を割って本音で語り誠意を伝えるか…。

 

塾講師のあなた。

マジで頑張れ。

入試同様に、塾にとっては正念場なのだよ、2学期の面談。

あ、受験生は冬にもう1、2回は面談してね…。

 

 

というわけで、保護者の皆さま。

いずれにせよ塾講師はかなり「本気」で話をします。

志望校合格のため、そして次年度進級のため。

 

これを利用しない手はありません。

変に塾講師を出し抜こうとしたり、話を無視したりすると、

塾講師側は「では勝手にしてください」と、お子さんへの関わりを最低限にします。

少なくとも、気持ちは冷めてしまいます。

 

親としての想いや考えを本気で伝え、それでもプロである塾講師の提案にも

耳を傾けながら、先生だけが頼りです!と…。

そうすると、塾講師は「このご家庭のために頑張って何が何でも生徒を合格させるぞ!」と

必要以上に頑張ってくれたりします。

 

 

塾講師も、人間です。

(中にはどうしようもなくヒドいのもいますが…その際は躊躇なく塾を変えましょう♪)