「背骨が折れてますね」

それが初見の一言目。

「古い箇所で、石灰化してますね」

あぁ、触れられた箇所に思い当たる。

 一昨年、八王子脊椎外科クリニックの初診時の事。

思い当たった記憶は、入間ベースキャンプでのボルダリング中の落下。もう10年ひと昔も前のこと。

 また、ぶら下がり器を購入して、懸垂にいそしんでいると、肩がズキズキ傷んだ。あぁ、ボールの投げすぎ。これも古傷。

 そして昨年の終わり、スロージョグ中に膝が重くなり、速歩にスローダウンして帰宅。以来、膝が芳しくない。なんとも痛い。結局、スロージョグを再開出来ずに年を越し、2月2日、読売巨人軍のチームドクター、稲城やまざき整形外科に受診。

「半月板が割れてますね」

「炎症起こして水も溜まっている、抜いて、ヒアルロン酸を入れましょう、痛みが軽減します」

 

 もうすぐよわい62。

 運動と栄養、睡眠と良い加減の飲みがアンチエイジング実現の王道であると理解しているにも関わらず、継続運動のブレーキとなるのは、古傷ばかり。

 肩は、本気でプロ野球選手を目指して投げ込んだ、中学時代の代償。背骨は昔の栄光をと中年時無理をした代償。ランニングはやはり、山々を登った古傷。ボクシングの代償は?今更気にしてもしょうがあるまい、いずれも宝石のような思い出の数々の代償ではあるが。

 悔いはない、が、無理をすれば、それは全て自分に帰ってくるのだということを、身体で実感している次第。

 これからは、したくとも、もう出来ない無理ばかりであるので、それら無理の代償を受け入れ、身体と痛みに寄り添い、感謝をもって大切にしたい。なかんずく、それら全てを受け止め支えてくれた、身体に深く感謝を。そしてそれらがもたらした色褪せない思い出の数々を、血と涙で今を創ってくれた礎という経験たちを、時には宝石箱を開けるように、仔細に眺め、自分を褒めたいと思う。よく、がんばったね、ありがとう、と。