昨年は、ボクシング当たり年であった。
 数多の名勝負が産まれたが、中でもウェルターの一戦、エロール・スペンス・ジュニア対テレンス・クロフォードの四団体統一戦と、2連勝2KO勝利を飾った井上尚弥による対スティーブン・フルトン戦とマーロン・タパレス戦は、歴史に残る快挙となった。井上尚弥に限っては、日本のボクシング史上最強の称号から、世界ボクシング史上最強の評価を定着させた証としての、全米ボクシング記者協会2023年最優秀選手賞(正式名称シュガー・レイ・ロビンソン賞)に輝く、文字通り最高の年となった。
 このボクシング市場の活気は一重に、4団体~WBA.WAC.IBF.WBO~の垣根を超えた、ファンが望む闘いの実現に他ならない。そして市場にとってもその動向が、もっとも大きな経済効果をもたらすということを再認識できた年でもあった。さらに今年は驚愕のマッチ・アップが期待される。
 
1.タイソン・フューリー(35戦34勝24KO.1分WBCヘビー級)対オレクサンドル・ウシク(21勝14KOWBA.WBO.IBFヘビー級)による4団体統一戦 2/18 「真のヘビー級NO1を決める闘い。パワー対スピードの軍配は如何に」
2.アルツーツ・ベテルビエフ(20勝20KO.WBC.IBF.WBOライトヘビー級)対ディミトリー・ビボル(22勝11KO.WBAライトヘビー級)「全勝全KO、剛腕ベテルビエフは前節WBSSの覇者カラムスミスをノックアウト、一躍パウンドフォーパウンド戦線を噂されるまでになった。全勝のビボルに勝利すればトップの座も夢ではない」
3.サウル・カネロ・アルバレス(60勝39KO2敗2分.SミドルWBA.WBC.IBF.WBOスーパーミドル級対デビット・ベナビデス28勝24KO.WBC暫定スーパーミドル級)「ビボルへのチャレンジは失敗に終わるも四団体統一チャンプを維持するカネロとパンチャーベナビデスのマッチアップ。速さ上手さのカネロにベナビデスのパンチが当たるかが、勝敗を分かつポイント」
4.テレンス・クロフォード(40勝31KO.WBA.WBC.WBOウェルター)対ティム・チュー(WBO24勝17KO.スーパーウェルター級)「現パウンド・フォー・パウンドNO1。全盛期のクロフォードにティム・チューが挑む。父コンスタンティン・チューばりの効かせられるパンチをクロフォードに当てられなければ勝負は一方的か」
5.デビン・ヘイニー(31勝15KO.WBCスーパーライト級)対シャロン・エニス(IBFウェルター級31勝28KO1無効)「クロフォードとのマッチアップを期待されていた若くKO率の高いパンチャーエニス。ロマチェンコのパンチをかなり被弾したヘイニーが同じように被弾すれば、勝負は一方的な展開になる」
6.井上尚弥(26勝23KO.WBA.WBC.IBF.WBOスーパーバンタム級)対ルイス・ネリ(35勝27KO.1敗)「井上尚弥の潜在能力を更に引き出す可能性のあるマッチアップ。ネリの出来が悪ければ、早い回でのKO決着は必至」
7.ジャーボンティ・デイビス(29勝27KO.WBAライト級)対シャックール・スティーブンソン21勝10KOWBCライト級)「これはおもしろい。パンチがあり当て感ピカ一のデイビスも防御は粗削りなところもあり被弾をものともしない試合運びが観られる。一方五輪銀のスティーブンソンのテクニックは秀逸で、マニア垂涎の、とてもハイレベルの攻防が期待できる一戦」
 
いずれも垂涎の一戦であるが、この7戦中パーフェクトレコーダーのマッチアップが5試合もある。
 それと共に、パウンド・フォー・パウンドランキングも激烈を極めることになろう。2024年度誰と何試合するかにもよるが、ベテルビエフなどは、この一勝でいきなりトップ戦線に躍り出る可能性も否定できない。
 この一年のボクシング戦線、乞うご期待!