前人未踏の高みに昇華した見事な試合だった。
 オーソドックス対サウスポーならまだしも、オーソドックス同士の闘いにおいてフルトンは、クローズドスタンスから、井上尚弥の前の脚を踏むという暴挙に出た。都合3回。1回はレフェリーがフルトンを注意し、2回目は井上尚弥がレフェリーにアピールするも、偶然と流す。3回目はなんと、井上尚弥がフルトンに前の足を踏まれる寸前に外す。なんという集中力。しかし、危険極まりない。打ちに行った時に踏まれれば、前の足の腱は簡単に切れる。しかしこのダークな所業をも結果的には、以後井上尚弥の戦術の棚から、新たな引き出し〜速い小刻みなステップワーク〜を空けることとなったことを、今頃フルトンは悔いているだろう。確かに極めてダークな戦法以外には、フルトンが勝つ可能性は皆無であった。
 パンチの速さ、反応の速さ、ディフェンス力は、井上尚弥に比肩して劣らなかったが、しかし、当て勘の良さ、何よりパンチ力に段違いの差があった。戦術も試合運びも、極めつけはフルトンが自分が勝っていると豪語したインテリジェンスも、井上尚弥の比ではなかった。圧巻はボディジャブで釣ってからの顎の付け根への右ストレート一閃。さらに、追撃の左フック。その凄まじい速さで、手を付いたフルトンへの追撃をレフェリーは、止める術もなかった。そして、連打の仕留め。
 さて、今度の日曜、30日。4団体のベルトをかけた世界ウェルター級タイトルマッチで、クロフォードがスペンスを破れば前人未踏の2階級完全制覇が達成されるが、スペンスに敗れれば、井上尚弥が次戦でその、史上初の栄誉を勝ち取ることになるであろう。
 史上初4人を撃破しての、史上9人目の4団体統一王者に輝き、4団体のタイトルを返上、階級を上げた次戦で2団体を、しかもTKOで統一、4階級制覇という記録付き。その戦績は、25戦25勝22KO。正にライブ配信された中南米及び世界を駆け巡った、圧巻の戴冠でありました。
 見事也!!
 そして、おめでとうございます!!