大リーグを例に取ろう。大リーグのシーズン試合数は162試合。その試合を消化する中で、昨シーズン、東部の1位ヤンキーの勝率は6割1分1厘。最下位のレッドソックスの勝率が4割8分1厘。中部は、というと、1位のガーディアンズが5割6分8厘。最下位のロイヤルズが4割1厘。ついでに西部を見ると、1位のアストロズが6割5分4厘。アスレチックスは、3割5分4厘。さて、これらの数字から読み取れるものは、何か。それは、野球という競技の特徴であり特殊性だ。

 首位のチームは、2回の対戦の内1回以上勝ち、最下位は、3回の対戦の内1回以上勝つ。言い方を変えれば、リーグ優勝チームでも、2回対戦の内、1回程度は負ける可能性があり、リーグ最下位でも、3回戦えば1回以上は勝てる。これが野球という競技の、紛れもない特徴なのである。

 だから、シーズンを通して活躍し続けるフィジカル管理とメンタリティが求められ、それが可能な選手を多く有するチームが強い。勝負を決する差を付けるのに要する試合数が162試合。言い換えれば、トーナメントでは、極めて差が出にくい、そんな競技なのである。

 だからこそ、このノックアウトステージに照準を絞り、そこに合わせてしっかりとチームとしての準備を、どこまでしてきたか、が問われ、それを持ってしても好不調の波を捉える運も必要となる。今WBCにおいては、大リーグのキラ星の如きスター軍団を要し、アメリカを差し置いて優勝候補筆頭に挙げられていたドミニカ共和国ですら、予選落ちの憂き目を見てしまう。そんな、難しさが、ある。

 日本もアメリカも、いつ負けてもおかしくはないのだ。どんなに強くとも、おおよそ2回に1回は負ける。野球は、リーグ戦で勝者を決める競技で、トーナメントでは、波と運という不確定要素が強くなる。だからこそ、ノックアウトステージ方式は盛り上がる、とも言えるのだが。繰り返すが、リーグ優勝するスター軍団が、ノックアウトステージで優勝するとは限らない。それがWBCなのだ。

 さあ、イタリアに勝ちそうな今、Go to Miamiが叶いそうな今、だからこそ、過度に期待しすぎることはやめて、ビールとチップスを片手に、かっ飛ばすホームランバッターを、超剛腕のピッチャーを、盛大に頑張る選手たちを応援して盛り上げようではないか。そして、勝っても負けても、今を楽しみたい。




PS,プエルトリコもメキシコも、めっちゃ強い。

プエルトリコは先発予想全員がメジャーリーガー
ベネズエラ、メキシコ、もちろんアメリカも同様。
日本は4名のみ。ちなみに、イタリアは6名。
日本の強さの秘訣は、準備の良さと、何よりNLBに所属するトッププレーヤー達と、MLB所属のメジャーリーガー達との実力の差が、極めて近接している証。