ベストセラー「裸者と死者」の著者、ノーマンメイラーの名言に、「超越的なものへの飢餓感」がある。

 この、”飢餓感”は、その肉体に宿るタレントを統合し昇華させ、”何ものか”に結実させるためには必須かつ不可欠なエレメントのことを指す。そして、沢木耕太郎は、「クレイになれなかった男」(一瞬の夏)の中で、モハメド・アリにはその、飢餓感があり、アリよりも肉体的・運動神経的には勝っていたホセ・トーレスには、その飢餓感が欠落していた。従って、プエルトリコの英雄であるホセ・トーレスは、世界の英雄クレイ(モハメッド・アリ)には成れなかったことを、紹介している。

 事実、アリが難攻不落のパンチャージョージ・ファーマンに挑んた時、全ての記者がファーマンのKO防衛を確信し、アリに対しては憐憫の情が見て取れる程であった。にもかかわらず、アリは記者会見で座った目で吠える。

 ”俺が一番だ。俺は蝶のように舞い、蜂のように奴を刺し、醜い熊をノックアウトする”

 これである。

 このメンタリティこそ、超越的な飢餓感が宿った者の証明以外の、何物でもなかった。

 そして、これこそ、世界で9人目となる、4団体のベルトを統一した、傑出したタレント井上尚弥選手の強さに想いを馳せる時、ここに答えがあるのだ。

 

 

 

 ボクシングという競技において世界の頂点達の中の頂点”トップ・オブ・ザ・トップス”に君臨するためにはなにより、土壌としてのパンチ力、当て勘、動体視力、回避能力、脚の速さといったエレメントを全て兼ね備えたタレントである上で、それらを統合するメンタリティ

”超越的なものに対する飢餓感”

を併せ持つか、が鍵となる。

 そして、井上尚弥選手こそが正に、その存在であった。

 

 井上尚弥選手は幼少の頃からボクシング関係者の中で、数々の伝説を紡いできた。

 それらはこの、元IBF世界Sバンタム級チャンプの小國選手へのインタビュー記事の中で、紹介されているのでご覧いただければと思う。

 

 

 はっきりと宣言したい。

 これから井上尚弥選手がチャレンジする、一階級上のSバンタム級戦線は正に、群雄割拠。中でも4つのベルトを2本ずつシェアする、フルトン、アフマダリエフについては、井上尚弥選手を凌駕するという記事も見受けられる。

 とんでもない。

 確かに井上尚弥選手が求める、これまで以上にヒリヒリする闘いにはなるであろう。だが、宣言しよう。賭けてもよい。井上尚弥選手がこの、”超越的なものにたいする飢餓感”を失わない限り、彼等は敵ではないのだ。

 井上尚弥選手は近い将来、世界Sバンタム級の4本のベルトを統一するであろう。そして彼の名は、世界ボクシング競技の歴史にその名を刻し、永遠に語り継がれることになること請け合いだ。なぜなら、

“超越的なものに対する飢餓感”

について、フルトンもアフマダリエフも、持ち合わせている量が圧倒的に少ないからだ。現に彼らの井上尚弥選手に対するコメントがそれを、証明してしまっている。

 

 新年の井上尚弥選手の更なる席巻、こうご期待!

 

 

 

 
みゃーちゃん、もう少し、頑張って