ボクシングにおける、井上尚弥選手がそうであった。

 パンチ力、目利き、見切り、タイミング、当て勘、あらゆるエレメントを内在し、その内在を自覚している傑物が、その向かう先を具体的にイメージするとき、それらのエレメントたちは弁証法的な結実を見せ、結果もう、その目標は叶ったも同じとなる。だから彼は、ドラマ・イン・サイタマにおいて、ドネアを2ラウンドで料理し、13日もまた、4団体統一戦という偉業を、“圧倒して”、成し得るであろう。

 三笘選手からは、それと同等の既知感を感じさせられた。彼の今ワールドカップに於ける偉業は、彼のタレント性を披瀝したことだ。ドリブルセンス、トップスピードに至る速さ、チェンジ・オブ・ペース、切り返し、そして、球際の強さ、なによりコントロール。つまりは、井上と同様に、あらゆるエレメントを持っている彼が、次なる昇華されるべき自分の、具体的像を、斯様に結実させたのである。

「ゴール、アシストをもっと取って、チームを勝たせる存在にならないといけないと感じました。世界のトッププレーヤーは、1人で局面を打開して決め切る力があると思うので。そういうところを身につけて、もっとシュート打てるようになって、走れるようになって、戦える選手になりたいなと思います」

サラッと凄いことをのたまう。

三笘は、そう、なると言ったのだ。ライク・エムバペに、ライク・メッシに。そして、エンゼルスの大谷投手と、同じに。

 ゾクゾクするね。具体的になに者かをイメージできた彼は既に、なに者かに成ったに等しい。後は、靭帯の損傷やオーバーワークに細心の注意を払って欲しい。さすれば我々は、何者かに昇華したニュー三笘に、刮目する時が、必ずやくるであろう。