「飢えて死ぬ子供を前にして「嘔吐」は無力である」と自著まで揶揄したサルトルに対して、「子供が飢えて死んでいく社会がいかに問題かを訴えられるのは言葉しかない」と発言した識者がいたことを、野田元首相の追悼演説を聞きながら思い出した。これまでの自分自身の社会生活の中で、所詮政治家は人気とりが商売~というあきらめの境地に陥ることも多々あったが、安倍元首相が発せられた言葉を聞くと、それ以上の強い信念と確固たる使命感を持った政治家であったことを痛感させられた。票:人気を失っても、政策を実現させる気概。それは、トランプ大統領への説得にも直接表れた。
 なにより、国際社会での信託を得た、交渉力、人間力は卓越していた。従来の日本の首相イメージを悉く覆した功績は顕著だ。その原動力に、思想・信条があったことが政治家としての価値を高めたと痛感する。何故なら、動機が純粋でかつ、強固でなければ、行動には一貫性はなく、長続きもしないからだ。それは、首相としての長い在位期間が証明していると感じる。

 

 

 今、この記事を書いている2022年10月25日がどのような世相か。新型コロナのパンデミック以上に、人類を危機的な状況に追いやった人という種の悪癖が爆発前夜だ。幾度となく書いてきたことだが、言語脳の局在という遺伝的変異を獲得した結果、意識と記憶を手に入れたヒトという種は、その代償として“同種殺戮抑止”という本能を手放した。その結果、生物学史上まれにみる大規模な同種殺戮を2度も実現した種に、3度目の獲得期が訪れようとする最中だ。

 こんな時にこそ、安倍晋三というタレントを失ったことは、大変な損失となった。世界的に、だ。そんな現時点で、元CIA長官はインタビューでこのようなことを述べている。

 


 また、大国の具体的な動きには危機のアナロジーが、大変解りやすく反映されている。

 


 日本という島国は、地政学的にはまるでポジとネガのような正反対のエレメントをもつスイスと、比肩して劣らない特異性を併せ持っている。その国の強力な発信力を持つリーダーいるとすれば、その行脚と行動で最悪な事態を回避する鍵にもなれるのだが。
 国破れても山河は残った。今度は、そうもいかないであろう。
 本当の政治家か現れるまで待つ時間は、もう、余りにも少ない。



終わりの始りか。