音鳴りさん(2) | ティラノサウルス ~ オンラインゲームのプレイ動画

ティラノサウルス ~ オンラインゲームのプレイ動画

適当にオンゲやって、たまに動画とか貼り付けるところ

前回の続きです。
すぐ出来ると思ってたのですが、やる時間がなくて出来ませんでした。



 その日からぷっつりと、遊びの帰りに女の人が現れる事も、あの音を聞く事もなくなってしまった。僕も暫く気にしていたのだけど、その内気にする事を忘れてしまっていた。
 すっかり夏になった頃、僕はいつもの様に川に遊びに来ていた。この川は左右の川岸付近は膝こぞうより浅くなっているんだけど、真ん中辺りは深くなってて流れも速い。泳ぎがうまければ真ん中でも遊べるんだけど、僕はまだ泳げないから、真ん中へは近づかない様にしていた。
 今日の目的は、ザリガニのヌシを捕るためだ。ヌシは普通のより大きいザリガニで、子供達の間では有名だった。みんな狙ってるんだけど、まだ誰も捕る事は出来ていない。
 僕は川の中を注意深く探していた、すると大きなザリガニが歩いているのが見えた。とても大きいザリガニだ、ヌシに間違いない。
 焦る気持ちを抑えて、僕はゆっくりとヌシに近づく。影が映ると逃げちゃうから太陽に向かう方向で、ゆっくりヌシに近づくんだ。
 そしてそっと手を差し出し、水のへ入れて行き動きを止める。心の中で1、2、3と数えて素早くヌシの背中を掴みに行った。しかし、ヌシは泥煙を巻き上げて僕の足の間を通り抜けて逃げてしまい、指先がヌシの背中を掠めただけだった。
 僕は悔しく思って、ヌシが逃げた先を探すと、2メートル位移動した所を歩いていた。次こそはと思って振り返ようと足を上げようとした。でも、僕はその場で足を取られて体勢を崩してしまった。余りにじっとしてたせいで、足が川底の泥深く沈んでいたみたいだ。
 僕は川の中に顔から落ちてしまった。ちょっと冷たいけど暑いから気持がいい。ここら辺りは浅いはずだから、手をつけばすぐに立ち上がれるだろう。今日は暑いから少し位濡れた方がいい。そうだ、今のも暑かったからわざとって事にしよう。などと考えつつ手を底につけて起き上がろうとした時、僕はある異変に気が付いた。
 伸ばした手の先には、やわらかい泥の感触がするだけで、手がもぐってしまって起き上がる事が出来なかった。そればかりか、段々と体は川の中心の方へと滑っていった。
 息をする為に横を向いたら何とか水面に顔は出たのだけど、どんどん体は川の中心に滑ってしまって、とうとう僕は流れが早くて底の深い川の真ん中へ落ちてしまった。
 僕は泳げないから川の真ん中には近づかない様にしていた。そのはずなんだけど、ヌシが居たのはその手前だったみたいだ。僕はヌシに夢中で気が付かなかったんだ。
 このままでは流されてしまうと思って、急いで浅瀬に戻ろうと手を伸ばしたのだけど、もう手が届かない位に流されてしまっていた。
 さっき僕が居た所にヌシが見える。それはまるでこちらをじっと見ている様な気がした。その時、ヌシが僕にバチを当てたんだと思った。
 僕は手の届く場所へ片っ端から手を伸ばして色んなものを掴もうとしたんだけど、草は千切れてしまうし、泥は崩れてしまう。そして顔も沈みかけて息は長く続きそうもない。もしかすると、このまま死んじゃうのかとも思い始めていた。
 段々と水の中へと沈んでいこうとしていた時、川縁を何かが走っている影が見えた。そして、それは僕の目の前に飛び込んで来た。僕は無我夢中にそれにしがみ付くと、中身が空っぽの筒の様な感触がした。
 水に流されつつも必死にしがみ付いていると、やがて水の中から上がれる位浅くなった所にたどり着いていた。陸に上がるととてもへとへとだったので、僕はさっきまでしがみ付いていたものの事を忘れてしまっていた。
 その時だった、後ろであの音がした。煎餅や海苔の入った空っぽの缶をものさしで叩いた様な音だ。方向からすると僕が上がった川の中から聞こえた。
 ハッとして振り返ると、さっきまでしがみ付いていたものはもうそこにはなく、川下の方を白っぽい何かが流れていくのが見えた。
 僕はすぐに土手を走って白いものを追いかけたのだけど、ついに追いつく事は出来なかった。白いものは遠くの方に流れて消えていった。僕は何故だかとても悲しくなって、泣きながら家に帰った。
 この時を最後に、あの音は二度と聞く事はなかった。




まだ続くます。

週末に相方さんと遊んで来た話題などもその内に。

(o´・∀・`o)<でわなたっ