映画「葛城事件」の葛城親子は実はこんなにチャーミングであり

自身の劇団 THE SHAMPOO HATの舞台から映画へと更に進化させた

赤堀雅秋監督は、この映画を「希望のある物語」と言う

面白い才能の持ち主で、興味深い監督さんであります。


舞台では

三浦友和さん演じるモンスターペアレンツと言える父

葛城清を赤堀監督自身が演じ

若葉竜也さん演じる通り魔殺人事件を起こす次男を

映画で長男を演じた新井浩文さんが演じました。


新井浩文初舞台。


殺人を犯してしまった少年の家族は果たしてどんな家庭だったのか?


そして、どうやって崩壊していったのか?


内容だけ聞いても、とても見たかった。


大盛況の舞台という噂で、当時、見に行くのを諦めたことを思い出す。


そして

赤堀監督の映画監督1作目「その夜の侍」がとても好きだった。


司会をしながら

話を聞くのが楽しくて楽しくて

決して楽しい映画ではなく。


復讐に執着した男の話なのだけど、堺雅人さん演じる主人公しかり

山田孝之くん演じるとんでもなくイヤな男しかり

それに流されてしまう谷村美月ちゃん演じる女性しかり

その人たちの行動から、考えていることを知りたくて知りたくて仕方がない

魔力を持つ映画だったから。 


この赤堀雅秋監督の才能を舞台の頃から目をつけ

「その夜の侍」で映画監督デビューへと導いた

藤村プロデューサー。


そして藤村プロデューサーによる

赤堀監督の映画2作目

「葛城事件」初日の今日。


何故、次男の稔は、無差別通り魔殺人事件を犯したのか?


何故、父・清は、あそこまで絶対政権を振りかざし、偉大な父として君臨しようとしていたのか?


何故、母・伸子(南果歩さん)は、そんな夫と別れずにずっと黙ってそこに佇んでいたのか?


ひとつの仕草、その時の口調だけで、興味が湧く、その脚本と演技力。


長男の保が、家族に何も言えないのは、きっと父親に何を言っても無駄だと悟って

諦めてしまっているから、反発することさえ許されずに育ったから

人との真正面からの対話や戦い方が、分からなかったんだと思う。


そして

稔に獄中結婚を申し出た星野順子(田中麗奈さん)は

何故、そこまで見ず知らずの稔に、光を見ようと執着したのか?


通常では

理解出来ない人々の心理なのだけれど

何故か、何処かで「分かりそう」な自分に突然、気付かされた映画だった。


人の心の細やかな動きからどうやって人が感じ、そこから行動していくのか?


こんな丁寧に、愛を持って、一人一人を描き出した脚本。


役者もそれは演じがいある難役で、惹かれるに違いなく。


田中麗奈さんの今日の舞台挨拶での言葉がそれを意味していた。

「葛城清は、どこか憎めない。それは、根底には家族への愛があるからだと思う」


「夏の暑い中、短期間の撮影だし、色々、大変だなと一度お断りしたんです。

でも後になって、私がやらなかったら他にあの人がやるだろうな?と数人の俳優の人の顔が浮かんで。

そう思ったら、絶対(清を)やりたいと思い直したんですよ」


三浦友和さんは舞台挨拶でそう口にしていた。


まったく自分とは関係のない家族の話し。


果たしてそうなのかな?


時々、見かけるこんな家族。


何処からいつから道を踏み外したか?


見終わったら、そのことが気になって仕方がなくて。


気付いたら自分ごとのように考えている映画だったのですよ。