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ローマへ行った際、目にした「ピエタ」像。


愛する息子キリストを抱き抱えるマリアの穏やかで

深い愛を感じるその表情は

今も鮮明に脳裏に焼き付いています。


6月6日公開の「トイレのピエタ」


食道がんが見つかり、余命3ヶ月の宣告を受けた

28才の園田(RADWIMPS野田洋次郎)。


病院の待合室で、サラリーマンに

いちゃもんをつけていた女子高生・真衣(杉咲花)

との出逢いが、今まで無機質だった彼の感情を

やがて大きく揺さぶることに。


死にたくないのに死をつきつけられた園田。


死にたいけれど死ねない真衣。


画家になることをあきらめ、夢も希望も生きる意味も

見えなくなっていた園田が、本当に死を直面した時

病院で出会った人々との関わりや

真衣との不可思議な交流を通して

生と死について自分なりに見出だしていく。


もともとデビュー作「ピュ~ぴる」から親交があった

松永大司監督のメジャー映画デビュー作で

制作プロデューサーに名を連ねるお2人のお兄様も

よく知っていたので

期待度は高く、贔屓目で見てしまうか

シビアに見てしまうか、自分でもわからなかった

この映画。


そんな不安なんか忘れ去られ

園田の気持ちに共感なんてわからないのに

いつの間にか何故だか引き込まれ

真衣の気持ちにも共感しようがないのに夢中になり

よくわからないけれど

えらく理解した気持ちになって

エンドロールに流れる曲に耳を傾けているうち

じわじわ涙が溢れてきたのです。


自分自身の死なんて直面したこともなく

死にたいくらいの状況になったこともないのに

こんなにハートに痛烈に語りかけてくる映画なんて。


考えてみると、松永監督は

「ピュ~ぴる」というドキュメンタリー映画でも

その他の短編映画でも

一貫して、真面目過ぎるくらい登場人物とまっすぐ

向き合い、心のうちを映像に焼き付ける人だった。


だから

共感するしないなんて関係のない

胸を締め付けるほど、脳裏に焼き付く映像を

作り上げる人なんだと。


だから

杉咲花ちゃんの今までの印象とは真逆過ぎる

我の強い、それでいて切羽詰まるほど

生き急いだ熱さとクールさを持つヒロインが

顔を出したのだろうし

演技初のアーティストである野田洋次郎さんの

ナチュラル過ぎる存在感の中に何故か人を惹き付ける

不思議な影を纏った園田が誕生したんだと。


安心して、腕に包み込まれる存在の偉大さ。


それは家族でもなければ、友達でもなかったり。


ピエタの穏やかで深い悲しみから見えてくる

大きな愛って、一体、どんな存在なのか?


そんなことへ想いを馳せ、とりつかれるほど

気になる見心地が何故か心地良い作品です。