「楓、ちょっと待っててね」
「うん」
美佳の家の玄関で待つこの時間、
長いようで短い、短いようで長い、この時間。
私は、この時間が過去も今も嫌いなの。
過去の私は、早くあの人に会いたいから。
今の私は、私のどこかにある後ろめたさを感じるから。
今の私はあの人に会ってもいいの?
私はほんとにあの人に会いたいの?
そう思うと、わからなくなってくる。
でも、そうじゃない…どこかにある後ろめたさは、それとは違う。
あの人は、私に会いたくないないんじゃないのかしら。
私が迷惑なんじゃないのかしら。
この時間はそれを頭によぎらせる。
そして、私は私を惨めに思う。
「まぁ、大分変わったのね」
「そりゃあ、変わるって~、時間は流れてるのよ!楓!」
「……そうね」
時が移ろえば、いろいろ変わる。
家の壁紙、家具の配置、人も人のこころも。
あの人だって…。
でも、私の想いはあの頃のまま。
どうして、変わらないのでしょう。
これだけ時が移ろっても変わらなければ、
ずっとこのまま変わらないんじゃないかと思う。
いつまでたっても、あの頃のまま。
私は一人取り残される。
過去を想い、私は取り残される、
あぁ、やっぱり、私は惨めよね。