借金と聞くとかなりマイナスイメージが強い。そりゃあ借金なんてせんほうがええに決まっとる。


物心ついたぐらいからウチが他所よりお金がないのがだんだんとわかってきた。それと言うのも、例えばポテトチップスが1袋があったら、きょうだい4人でシェアする。要するに均等に分け合う。それが我が家のルール。菓子パン1つでさえ、必ず4等分。

他人からしたら、何それ?ってツッコミたくなるやろうけど、私たちきょうだいは誰一人文句は言わず、むしろ貧乏を楽しんでいた。電気代が払えず停電した日も、親が金の無心のために留守にしとる間、ロウソクを灯しながら、お互い笑いながら待っとったのを今でも思い出す。


たしかにお金がないと生活は成り立たん。物価高でなおさらや。子どもの時は貧乏を面白がる純粋な心があったが、大人になると常にお金のことばかり気にして、心にまったく余裕がない。


余裕が無くなったのには明確な理由がある。私が社会人になってから、たびたび母親から金の無心をされるようになった。下のきょうだいはまだ学生やったし、父親が亡くなって収入が一気に下がって母も大変やったと思う。

ある時、母から借金の連帯保証人になってほしいと頼まれた。私もまだ20代やったしそれは出来んと最初は断ったが、母が必ずきちんと返済するからどうしてもなってほしいとあまりにしつこく言ってくるので、私も仕方なく同意してしまった。これが大きな間違いやった。

母は1円たりと返済せえへんかった。業者から私の職場に電話が掛かってきてわかったことなんやけど。それからと言うのも毎日のように電話がきて、毎月私が返済するという負のループが始まる。母に今の状況を説明して怒ってもごめんと言うばかりで、一切払うことはなかった。

そんな毎日が続けば当然上司や同僚が心配するようになってくる。私はクビになるのを覚悟してすべてを話した。職場にそういう取り立ての電話がくるのは業務に支障をきたすから良くないと注意されただけで、辞めずに済んだのでありがたかった。

そうやって3年近くが経ったころに返済期限が近づいていること、利息ばかり減って元金がほとんど残っていることがわかった。要するに期限までに一括返済しろってこと。そんなん無理ゲーや。

毎月払いよったのになんでや?あーもう永遠に終わらへんのか!

会社に相談して出た答えは自分の退職金から払うというものだった。これしか方法がなかった。結局辞めたくもないのに辞めた。辞めて実家に帰ったら、誰が辞めろ言うた!って母親に怒られた。誰のせいや!

10年近く住んだ大阪を離れるのはホンマに嫌やったし、今もリセットして戻りたいって思う。せやから、面接のとき田舎に戻った本当の理由は言えない。だからいつもそれっぽい適当なことを言うようにしてる。

嘘ついて隠すとか最低や。