FMSの闇及び対米交渉のずさんさもあり、見積もり価格が大幅に向上していたF-15 能力向上事業、離島防衛などのため当初予定していた長射程の米国製対艦・対地ミサイル「LRASM」の導入を見送ると共にまとめ買い効果による価格低減等を条件に継続方針で自民党国防部会も事業継続を了承。

 

F-35や次期戦闘機もステルス機のため、搭載ミサイルを機体内に入れるため、搭載数に制限を受けている関係上、F-15のミサイルキャリアとしての価値は今まで以上に重要性を増している。一方、一部部品の枯渇などを理由に米側が金額の大幅アップを要求し、一時は1.7倍の約5520億円に膨張。自民党の反対もあり、2020年度予算の執行と21年度予算への計上を見送った。

 

 そのため、相手の射程外から発射できる「スタンド・オフ・ミサイル」として期待していたJASSMは搭載するものの、もう一つのLRASM(射程約900キロ)搭載を諦め、その代替え措置として、長射程化した国産「12式地対艦誘導弾」をF2戦闘機に搭載する方向で調整する。

 

JASSM搭載のF-15能力向上型の一番機は当初よりやや遅れて令和9年度を予定するが、それに併せるため12SSMのF-2搭載も令和10年度ではなく、令和9年度に前倒しすることが望ましい。防衛省も努力する事を約束。

 

 ただ、FMSの特性上、今後の交渉で価格が値上がり、或いは国内でなく米国で試験するための費用も数百億円と高額な為、まだ提言できる可能性もある。これまでの教訓を踏まえ、防衛省内にチームを作り、価格の更なる上昇阻止、価格の低減を目指して、日米交渉を行う必要がある。そのため、概算要求は、金額を示さず事項要求として、年末までに来年度予算案編成に務めることとした。これまでの日米交渉で、現時点で、当初見積もりの1.23倍に収まったとはいえ、かなりの高額であることは間違いない。国民への理解、説明の為に、わかりやすい説明資料を作ることも防衛省は約束。

 

また、F-15能力向上の改修費は、初年度費約1600億円、まとめ買いして価格低減しても1機あたり約35億円とかなり高額。約70機改修すると約2380億円にも上る。また、まとめ買いをすると、その分ある年度は多くの予算がF-15能力向上型に割かれ、F-35A/B等他の航空機調達整備にも影響しかねない。その対応も今後の検討課題だ。

 

防衛省には今後の対米交渉において、「価格高騰は認められない、努めて低減努力を進めないと、自民党の理解を得られない」との覚悟を持ってあたってもらうこと等を条件に、F-15 能力向上事業継続を認めることとなった。